日本のロボット産業を見続けてきたカワサキだからこそ、これからも人の役に立つロボットを生み、育ててくれるのですね。
2017年11月29日から12月2日まで、東京ビックサイトで2017国際ロボット展が開催されました。大きな会場に全国各地から、そして世界中から集ってきたロボットの数々が! その多くはワンアーム・ツーアームな産業用ロボットでしたが、いくつか人型のロボットも展示されていましたよ。なんだか『パトレイバー』の1シーンみたいに!
数多くのブースのなかでも、多くの来場者が各モデルを熱心に見続けていたのがカワサキこと川崎重工のブースです。川崎重工は今年のロボット歴50年を節目としてヒューマノイドロボットを展示。いままで産業用ロボットを中心にリリースしてきましたが、総合ロボットメーカーとしての道を歩もうとしています。
今期の国際ロボット展ではどのようなロボットたちを展示していたのでしょうか。いっしょに見にいきましょうか。
人間サイズのロボットが家庭にやってくる近未来
展示ブースの中央に展示されていたのが、人型ロボットのベンチマーク・リファレンスとして川崎重工が開発しているこちらのロボット。名前はまだありません。
大人の男性サイズ・重量を目指して開発されている内骨格型。肩や腕は太めですが、頭部・胴体・足は人間大そのもの。身長175cm、体重80kgで、大人の男性サイズです。
壊れてはならない。壊れたとしてもすぐに修理できなければならない。そんな産業用ロボットの分野で一角のメーカーである川崎重工だからこそ、この人型ロボットも壊れにくいものであるべきと、タフな設計がされています。
さまざまな動きができるようになっていますが、使われているパーツは産業用ロボットで使われてきた一般的で、かつ信頼性が高く、そして量産効果の恩恵を受けた低コストなものばかりなんですって。
重そうに見えますがさらに御覧ください。
鉄パイプにぶら下がって懸垂できるくらいパワフルなんですよ。
人間のいる社会で動かすものだから、人間と同じサイズ、パワーであるべきというモデルです。もしかしたらこのロボットが私達の家庭にやってきて、家事手伝いを担当してくれる未来がくるかも?
身体が覚え込んだ感覚も受け継いでくれる弟子ロボット
職人がアームを使ってロボットにスプレーを教えます。
いわゆる職人技の伝承は難しいもの。数値化できませんし、言語化だって難しい技術ばかりですもん。
スプレー塗装だってそうです。複雑な形状のバイクのカウルに、均等にむらなく、そして粒子が荒れることなく綺麗にスプレーする仕事は、今まで人間の職人が1つずつやる技術であり、ロボットが簡単にコピーできるものではありませんでした。ロボット相手に「感覚で覚えろ!」と言っても、ねえ。
今までの作業用ロボットは、関節ひとつひとつに「このタイミングでこの角度ぶん回転する」というのをプログラミングしていました。プログラミングさえ完成すれば正確無比な作業ができますが、人の手のような柔軟な動きを再現しようとすると限界がありました。
そこで「Successor(サクセサー)」の出番です。技術を持った職人の動きをトレースしてくれるロボットで、「指に伝わる感触で力を加減する」や「ちょっとした手首のひねり」など、言葉にすることが難しい人の感覚・感性を学習してくれるんです。
動きを覚えた「Successor」は、動きをインプットした師匠の仕事をていねいにトレースします。免許皆伝ですよ。
人の手を介する流れ作業をアシストしてくれるduAro
流れ作業はロボットの得意とするところ。でも季節によって出荷する商品が異なる現場においては、産業用ロボットのプログラミングが間に合わず、結局ぜんぶ人力で作業してしまった方が早かった…なんてケースが多かったようです。
そこで 登場するのが双腕スカラロボット「duAro」。 人間1人ぶんのスペースに収まるボディに2本の腕を搭載。人間と同じように作業ラインに配置でき、複雑すぎるところは人間が、ワンパターンな作業はロボットが、と分担して流れ作業を進めることができます。
規定のサイズの箱を搬送用のダンボールに詰めるといったルーチンワークを自動化するだけでも、現場の負担は大きく低減するでしょうね。
「duAro」は人間とのコラボ作業が得意なロボットなので、「遅くして」「止まって」といった音声でコントロールができるんですよ。いま流行のスマートスピーカーっぽくないですか?
もし不良品を見つけたら「ちょっと止まって!」で作業を中断できますし。人間が慣れないうちはゆっくり作業をスタートして、慣れるにつれて「早くして」とピッチを上げる…なんてこともできそうですね。
ロボット歴50年の川崎重工が変えていくロボット市場
神戸の地で創業して121年。バイクメーカー「カワサキ」のイメージが強い川崎重工ですが、艦船、鉄道、航空機に巨大な橋なども設計・製造し続けてきました。そして50年前からは産業用ロボットの分野に着手したそうです。
1968年に米ロボットメーカー・ユニメーション社と技術提携をして、1969年には国産ロボット第一号機である「ユニメート2000型」をリリース。以後も汎用ロボット、塗装ロボット、ピッキングロボット、医療ロボットなど、さまざまな分野で働くロボットたちを作り続けてきました。
これだけ長い年月を経ても、業界トップとして活躍し続けてきているのは、高い信頼性があってこそ。常に、人のために、働き続けてくれるロボットを作り続けてきたその歴史に頭が下がる思いです。
いわゆるコンセプトマシン的なロボットのニュースは目にしますが、ゴリゴリのB2Bなロボットも進化を続けてきていたのですね。
なおこちらは、コーヒーメーカー専用にチューニングされたロボットで、4台のコーヒーメーカーにカップを入れ、コーヒーが入ったらトレーに綺麗にならべるというもの。お客さんがひっきりなしにくる商談ルームには、なくてはならない存在とみましたよ。
今後、川崎重工からどのようなロボットがリリースされていくのでしょうか。目が離せません!
Photo & Movie: 武者良太
(武者良太)
記事掲載元: GIZMODO JAPAN 2017.12.06より転載