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川崎重工のロボットづくり

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Japan Robot Week 2024 出展レポート

川崎重工ロボットディビジョンは、2024年9月18日から20日にかけて東京ビッグサイトで開催された「Japan Robot Week 2024」に出展しました。 カワサキロボットの出展ブース 今回の展示では、アーム付き自律移動型ソーシャルロボット「Nyokkey」と、参考出展で6軸多関節協働ロボット「CLシリーズ」を皆様へ初披露しました。ブース内では「Nyokkey」が搬送してきたワークを、「CLシリーズ」が加工機へ投入・取出しを行う、マシンテンディングと呼ばれる適用動作をデモンストレーションし、ロボットとロボットのコラボレーションに多くの注目を集めました。 また、会期中にはプレゼンターとNyokkeyが会話しながら、川崎重工のロボット事業や参考出展したCLシリーズの紹介をテーマに、プレゼンテーションを行いました。Nyokkeyには生成系AIが組み込まれているので、プレゼンターの即興質問にも臨機応変に答えることができ、プレゼンテーションは各回とも多くのお客様で大盛況となりました。 株式会社ショウワ様のブースにてduAroが活躍 また、今回のJapan Robot Weekでは、川崎重工の双腕協働ロボット「duAro」によるハンバーガー調理支援ロボットシステムを展示した株式会社ショウワのブースも注目を集めました。このシステムは、双腕ロボットと様々な機器を組み合わせることで、人手をかけずにハンバーガーのバンズを裏表綺麗に焼くことができ、食品・サービス業界への自動化提案としてデモを実演されていました。 川崎重工の精密機械ブースにてロボットと油圧技術のシナジーを展示 今回、東4-6ホールと反対の東1-3ホールでは、第27回油圧・空圧・水圧国際見本市(IFPEX 2024)も同時開催されており、川崎重工の精密機械ディビジョンも出展しました。展示されたロボショベルには、これまで培ってきた高度な油圧技術と手術支援ロボット「hinotori™」の遠隔操作を融合したシステムが含まれており、実機によるデモンストレーションが行われました。さらに、建設機械・産業車両向けの高速電動油圧ポンプユニットや、省エネ化・小型化・低騒音化を実現するオールインワン省エネ油圧ユニット「エコサーボ」など、多数の製品が展示されました。 今回のJapan Robot Week 2024は、ロボット技術の最新動向を紹介する場として、多くの来場者と出展者が集まりました。川崎重工の展示ブースでは、技術力と革新性をアピールする絶好の機会となり、多くの方にご来場いただき皆様の関心を集めることができました。今後も川崎重工は、ロボット技術の発展と普及に貢献してまいります。 川崎重工の油圧製品はこちら

展示会出展レポート:国際総合物流展 2024

川崎重工は、東京ビッグサイトで2024年9月10日(火)〜13日(金)に開催された「国際総合物流展2024」に出展いたしました。 川崎重工は物流分野で期待されるロボットによる自動化デモンストレーションを展示しました。4日間で合計約8万人の方が来場され、弊社ブースにもたくさんの方にお立ち寄りいただきました。 川崎重工ブースでは、「カゴ車からのデパレタイズ」、「6輪台車への積み込み」を出展いたしました。また無人フォークリフトやコンベアの製造・販売を行っている中西金属工業株式会社のブースでは、同社と共同で開発したデバンニングロボットVambo(高速オプション)が展示されました。 カゴ車からのデパレタイズ カゴ車(3方向を格子状の枠で囲われた台車)にも対応した業界最速のデパレタイズソリューションを展示しました。カゴ車は柵で囲われているため、ハンドや持ち上げた荷物の端がカゴ車の枠にぶつかるなどの課題がありました。新たに開発した動作計画のロボットプログラムによりロボットハンドや搬送中の箱がカゴ車の枠に当たることがなく、1時間に最大650箱を取出すことができます。通常のデパレタイズソリューションと同様に3次元AIビジョンを搭載しているため、混載でも高速かつ高精度の認識ができ、ロボットのティーチングを数点行うだけで、事前のワーク情報登録不要でご使用いただけます。そのため、1日でシステムの立ち上げも可能です。 デパレタイズソリューションの製品ページはこちら 6輪台車への積み込み 川崎独自の積み付けロジックにより、これまで難しかった6輪台車への最適な積み付けを実現しました。6輪台車はスーパーやホームセンターなどの品出しに使われています。吸着し上下で挟み込む独自開発のハンドによってミシン目が入っていて破れやすい箱などにも対応しており、1時間に最大550箱の積み付けが可能です。会場では操作のデモ画面および棒積み付けの様子を披露しました。 デバンニングロボットVambo(高速オプション) デバンニングロボットVamboは、人に代わりコンテナからの荷下ろしを行います。デバンニング作業は、過酷な環境で重い荷物の運搬を行うため、作業者への負荷が大きく、人材不足などの課題があります。ロボットによる自動化・省人化によりこれらの課題を解決することができます。Vamboは自走してコンテナ内に入り、通常版では1時間最大600箱、高速オプションをつけることで1時間最大800箱荷下ろし可能です。 ロボットの導入後の保守体制については、予知保全やリモートメンテナンス、24時間電話受付を含む、安心のメンテナンスパッケージもご提供可能です。 以上、「国際総合物流展 2024」の出展レポートでした。 出展製品の動画

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プレフィルドシリンジセミナー2024 出展レポート

川崎重工は、2024年9月10日~11日に開催されたPDA製薬学会主催の「プレフィルドシリンジセミナー2024」において、医薬ロボットやラボオートメーションシステムをメインに企業ブースを出展しました。本セミナーは、「コンビネーション製品の明日」をテーマに、医薬品と医療機器を組み合わせたコンビネーション医薬品に関連する専門家たちによる講演が行われ、多くの製薬メーカーや医薬品関連企業が参加しました。 川崎重工は、唯一のロボットメーカーとして出展し、VHP滅菌対応のMCシリーズや組み換え自由なラボオートメーションシステムを紹介しました。これにより、多くの出席企業の方々と情報交換を行うことができました。 出展内容 ・VHP(過酸化水素蒸気)滅菌に対応したロボットシステムで、医薬品の製造プロセスにおける高い衛生基準を満たすことができます。・高い精度と信頼性を持ち、製薬業界における自動化のニーズに応える製品です。 ・組み換え自由なモジュール設計により、さまざまな実験や製造プロセスに対応可能なシステムです。・効率的な作業フローを実現し、研究開発や製造のスピードアップに貢献します。 ラボオートメーションシステムの紹介ページはこちら セミナーの様子 このカンファレンスでは、コンビネーション製品に関わる専門家による講演が行われ、製薬メーカー、医療機器メーカー、医薬品受託会社など、多岐にわたる企業が参加しました。コンビネーション医薬品の製造や開発に関わる新たな技術は、業界の発展に大きく寄与するものであり、セミナー参加者たちはその技術や規制動向について深い関心を持っていました。2日間にわたるカンファレンスは、大変な盛況のうちに幕を閉じました。 まとめ プレフィルドシリンジセミナー2024は、医薬品と医療機器の融合による新しい治療法の可能性を探る貴重な機会となりました。川崎重工は、唯一のロボットメーカーとして出展し、多くの企業と情報交換を行うことで、今後のビジネス展開に向けた重要なステップを踏み出しました。今後も、医薬ロボットやラボオートメーションシステムの開発を通じて、医薬品業界の発展に貢献していきます。

西神戸工場にて物流内覧会を開催しました!

2024年8月23日(金)、当社の西神戸工場にて、物流関連企業様を対象にした「ロボットによる物流ソリューション」をご紹介する内覧会を開催しました。 今回の物流内覧会は午前・午後の二部制で開催しましたが、予想を超える多くの方からご応募いただいたため、残念ながら抽選でお断りさせていただいた方もいらっしゃいます。この場を借りてお詫びするとともに、次回開催も計画しておりますので、また参加をご検討いただけると幸いです。 さて、今回の物流内覧会。まず当社ロボット工場の会議室(ホール)にて、会社・事業紹介と物流業界向けロボットソリューションの概要をご説明しました。 当社のロボット事業は、1969年に国産初の産業用ロボットの生産を開始して以来、自動車業界や電機・電子業界をはじめとするさまざまな業界向けに、溶接、組立・ハンドリング、塗装、パレタイズ用など多数の高品質・高性能のロボットを開発・供給しています。 最近では医療現場向けの手術支援ロボットを手がけるなど適用分野を拡大していますが、物流業界でも労働力不足への対応から自動化ニーズが高まっており、当社でもロボットによるパレタイズ・デパレタイズのソリューションやデバンニングロボット“Vambo”を開発し、既に様々な物流現場で導入いただいております。 プレゼンでの説明後、内覧会の参加者の皆様には工場内にある国内最大規模のロボットショールームへ移動していただき、産業用ロボットの代表格である溶接ロボットや塗装ロボット、工程間搬送を実現する自走式ロボット“TRanbo”などをご覧いただきました。 そして、物流ソリューションのコーナーへ。 超重量可搬ロボットがビール瓶のケースを一度に9つもパレットから持ち上げるデモンストレーションを目の前にした皆様からは驚きの声があがっていました。 また、AIビジョンを搭載したデバンニングロボットのVamboが高速オプション追加により、1時間400~800個のケースをコンテナから荷降ろしする様子や、カメラによりケースのサイズや形状を把握しデパレタイズを行うデモンストレーションをご覧いただきました。 最後に、会議室に戻りQAセッションへ。 参加者の皆様からは「ケース(箱)の形状や状態はどこまで許容できるのか?」「AIの精度は?」など、たくさんのご質問があがり、当社の営業担当や技術担当が一つ一つ対応させていただきました。 物流内覧会は、午前の部・午後の部ともに盛況のうちに締めくくることができました。 晴天に恵まれたとはいえ30度を超える猛暑のなか、ご参加いただいた方、どうも有難うございました!

展示会出展レポート:JISSO PROTEC 2024

川崎重工は、東京ビッグサイトで2024年6月12日(水)〜6月14日(金)に開催された「JISSO PROTEC 2024(第25回実装プロセステクノロジー展)」に出展いたしました。 川崎重工はロボットによる自動化デモンストレーションを展示しました。3日間で合計約5万人の方が来場され、弊社ブースにもたくさんの方にお立ち寄りいただきました。 弊社ブースでは、ロボットのリモート操作を実現するリモートロボティクス株式会社の”Rimolink”と弊社の自走式ロボット”TRanbo-7”、ご好評いただいている双腕協働ロボット“duAro”を出展いたしました。またプリント基板のドリル穴明け機などを販売するビアメカニクス株式会社のブースでは、同社の製品と一緒にそのワーク(基板)交換工程を自動化するために開発されたワーク(基板)搬送ロボット“Drinbo”が展示されました。 Drinboは川崎重工のTRanbo-7をベースに開発されたプリント基板穴明け工程に特化したソリューションです。 Rimolink×TRanbo-7 弊社ブースでは、遠隔操作の実演セミナーを一日4回開催し、実際にRimolinkを使ってTRanbo-7を遠隔操作しているシーンを会場に集まった方にご覧いただきました。 実演後も、多くの方から製品に対するご質問やセミナーへのご好評をいただくことができました。 リモートロボティクス:リモートロボティクス株式会社(Remote Robotics)| 人とロボット。これからはたらくをもっと。 duAro 双腕ロボットならではの強みを生かした“マルチタスクの自動化デモンストレーション“を展示しました。 様々な電子部品を扱う人が集まるJISSO PROTEC展において、多くの方へ新しい解決策をお見せすることができました。 Drinbo プリント基板を設計・製造する株式会社メイコーと川崎重工は、プリント配線板用穴明け機の工程間搬送を自動化する自走式ロボット「TRanbo-7」を用いたソリューション「Drinbo(ドリンボ)」の開発を完了し、国内で販売開始しました。 お知らせ:https://kawasakirobotics.com/jp/?post_type=news&p=6492 そのDrinboの販売をご担当されるビアメカニクス株式会社は、JISSO PROTEC 2024にて基板穴明け工程自動化のデモンストレーションを出展されました。 困難と思われていた基板穴明け工程において、新たなソリューションとして登場したDrinboに注目が集まりました。 以上、「JISSO PROTEC 2024(第25回実装プロセステクノロジー展)」の出展レポートでした。 出展製品の動画リンク 自走式ロボット/ソリューション TRanbo‐7 Drinbo リモリンク 双腕協働ロボット duAro1 duAro2 川崎重工は、今後も製造現場における多くの自動化課題を解決すべく邁進してまいります。

構想から約半年で自動PCR検査ロボットシステムの立ち上げに成功

2024年現在、新型コロナウイルス禍の記憶は薄れつつある。川崎重工でもPCR検査サービスが2024年3月に終了し、社会から求められる役割にひと段落がついた。川崎重工が開発した「自動PCR検査ロボットシステム」は、PCR検査における医療従事者の二次感染を防ぐとともに検査時間の大幅短縮、検査数の大幅増加を実現し、多くのメディアで取り上げられた。 産業用ロボット開発のリーディングカンパニーと言って差し支えない川崎重工だが、コロナ禍当時、医療分野への知見はまだまだ十分ではなかった。医療分野は通常の産業ロボットの開発と比較しても綿密な検証とPDCAが欠かせない。さらにPCR検査のような検査システムにおいては、開発・導入にあたって医療分野ならではのノウハウが求められる。 そのため、「自動PCR検査ロボットシステム」開発にあたっては川崎重工単体ではなく、医療分野に強い2社との協働で行われた。検査・診断の技術を保有し、医療分野に幅広いネットワークを持つシスメックス株式会社。川崎重工の産業用ロボットへの知見、シスメックスの医療・ヘルスケア領域への知見を持つ株式会社メディカロイド。この2社と川崎重工が組むことで、高精度なロボットシステムを構想から約半年という短期間で開発することに成功した。 2021年1月31日には最初の導入実績として藤田医科大学に自動PCR検査ロボットシステムを設置し、1日最大2,500件のPCR検査を行うことが可能になった。その後は空港や自治体、大学等にも導入が拡大。導入が進んだ背景には といった利点が社会のニーズと合致したことが挙げられる。 ここからは自動PCR検査ロボットシステムの開発を担当した2名の技術者にインタビューし開発ストーリーを紐解いていく。社会と医療に対してコロナ禍当時どのように貢献し、かつそこから何を得たのかを振り返っていきたい。 医療従事者をロボットの力で守りたい -自動PCR検査システムのプロジェクトを始めることになったきっかけは 久保田:コロナ禍当初、ニュースを見ていると医療従事者がキャビネットの中で検査機械を一人で操作しているような映像がよく流れていました。しかし、感染が拡大し1人では対応できないぐらいの検査数になったことから、検査を自動化するニーズが急速に高まったのが開発の背景としてあります。 鈴木:大きなテーマとしては「コロナ禍の現場で感染リスクを抱えながら業務にあたっている医療従事者をロボットの力で守る」というもの。ただし、川崎重工で医療系の開発に携わっているメンバーは非常に少なく、最初は8人程度の人員で構成された医療システム部から始まりました。 -開発はどのように進みましたか 鈴木:私たち川崎重工側に医療システムの知見が不足している中、シスメックスさんとメディカロイドさんからいただく情報をもとに、ロボットにどう落とし込むかを考えて作り上げていきました。最初8人だった医療システム部は最大時には40人程度までメンバーが増え、開発のスピードも精度も向上。現場で目的意識を共有しつつしっかりコミュニケーションを取りながら開発を進められたと思います。 社会全体もコロナ禍で大変でしたが、開発現場も当初はパニックに近い状態。スケジュールや仕様を決めても毎日練り直しになりました。実際に導入フェーズになってからも、何体作るか、どこに設置するかなどの情報が日々変わるので難しい面がありましたが、現場では毎朝進捗ミーティングをして少しでも円滑に進めるよう努力していました。 久保田:技術的なところでは、最初はキャビネットの中にアームを突っ込んで検体を分注するようなロボットを作っていました。しかし、その後検体を分注してから検査結果が出るまで全てを自動化することになり、可搬重量などを試行錯誤した結果、RS007Nというロボットが採用されました。 -協力会社と一緒に開発をする中で重要だったポイントは 鈴木:人材を適材適所に配置するのが重要だったと思います。必ずしもロボットの専門家でない人たちもいたのですが、医療現場でのサービスに慣れている方や、医療制度関係の業務をやられている方もいたので、その方達の知見をうまく開発に取り入れていくという体制は取るようにしました。 久保田:肝になるのはロボットではありますが、自動PCR検査ロボットシステム全体としてはロボット以外の箇所が大きいんです。だから、必ずしもロボットの専門家でなくても適材適所でさえあれば活躍できたと思います。基本的には各々得意なところで頑張っていただいたという感じです。 スクランブル体制で開発を進めた世の中にない検査システム -本プロジェクトに設けられた成功基準はありますか 鈴木:技術的な観点では毎日1000件以上の検体を安定してさばければロボットとしては成功だと考えており、そこに関してはクリアできました。 久保田:プロジェクトを客観的に見たときの成功基準は、社会貢献できたかどうかだと思います。そこに関しては東京都の無料検査をこのシステムで検査してきた実績もあるので、一定の評価を得ることができたと思います。 -開発の中で苦労した点はありますか 久保田:やはり、我々川崎重工が医療分野での開発経験が不足していたことでの苦労はありました。特に、クリーン環境で感染性のあるコロナウイルスのような検体を取り扱うようなことは今までなかったので、技術的なところで苦労したと思います。だから、医療分野の専門家であるシスメックスさんやメディカロイドさんの協力は非常にありがたかったです。バイオハザードに対する教育もしていただいて、我々自身も知見を蓄えていくことができました。あとは、やはり非常に短い開発期間だったので、通常の開発フローではないスクランブル体制での開発だったのも大変でした。 鈴木:最終的には40人まで増えたとはいえ、とにかく最初は人員不足に苦労しました。開発以外にも稼働しているロボットシステムの監視やトラブル対応の業務もある。夜遅くまで残った日もありましたし、携帯電話が鳴り止まない状況が続いたこともありました。ただ、誰も倒れたりはしなかったので良かったと思います。 -開発をしていて喜びを感じた瞬間は 久保田:このプロジェクトは様々なメディアでも取り上げられたのですが、家族にも自分がこれに関わっているのを話すことができましたし、社会の中で自分のやったことが認められるという経験が初めてだったのでとても誇らしく感じました。おそらく部のみんなも同じことを感じていたと思います。 鈴木:新しい拠点に装置を納入して、検査を始めて…といった節目節目は嬉しかったです。特に記憶に残っているのは藤田医科大学に一号機を納入したとき。まだまだこの後も開発は続くのは分かっていましたが、いよいよ自動PCR検査が自分達のシステムで始まるという喜びはありました。あとは、応援者が来ることで仲間が増えることは嬉しかったです。これまで関わったことのない川崎重工の他カンパニーの皆さんや外部の方とも関わりを持てました。なかなか他の部署では経験できなかったことだと思います。 川崎重工の規模感とリソースだからこそ実現できた -最終的に自動PCR検査システムは無事に構築され、プロジェクトとして成功といって良いと思います。成功のポイントを教えてください 鈴木:やはり、世の中にないけど医療現場が求めていたところをしっかり提供できたことかと思います。感染リスクが高い検査をロボットがやることで、リスクがほとんどない状態で検査できる点ですごく優れたシステムでした。また、本システムだと80分で検査結果が出ますが、コロナ禍の当初はここまで短時間で結果が出るものはなかった。安全かつ早い検査をできるというところで、社会に貢献できたのではないでしょうか。 久保田:川崎重工のロボットディビジョンの特徴であるスピード感を持って開発するという姿勢があったからこそ、半年という短期間での開発ができたと思います。また、川崎重工は本体はもちろんグループ会社を含めて非常に多岐に渡る製造を行っているので、それらの技術やノウハウを結集して開発できたというのがあります。それこそ、PCR検査に使うコンテナも自社プラントで作っており、他社のロボット開発会社でこういったことができる会社は存在しないのではないでしょうか。この規模感とリソースは川崎重工のすごいところであり、成功のポイントだと思います。 医療のロボット=川崎重工を浸透させたい -今回のプロジェクトは今後にどう生きるとお考えですか 鈴木:やはりこういったシステム開発をしたという経験は単純に生きています。例えば、PCR検査をして検体がNGだった際に、結果だけを記録するのではなくなぜNGだったのか後からトレースして調べられるようにしました。この技術は現在開発している他のシステムでも応用しています。あとは、「川崎重工のロボットを使うことでこんなこともできるんだ」、と世の中に知ってもらうことができたのは良い機会になったと考えています。 久保田:医療系の会合に出ても川崎重工さんすごいねと言われることが増えましたし、世間にインパクトを与えたプロジェクトだと感じています。「医療のロボット=川崎重工」というイメージを、世の中に浸透させたいと個人的には思ってます。また、この検査結果から得られるデータにこそ価値があるというビジネスモデルは、川崎重工が従来行ってきたモノ売りではなく、コト売りです。遺伝子検査等にも応用できるはずですし、従来と違ったビジネスモデルが生まれるきっかけになったと思います。 ラボオートメーションロボットシステムのページはこちら

川崎重工の西神戸ショールームに潜入! ロボットの活用事例をレポート01

川崎重工の西神戸ショールームに潜入! ロボットの活用事例をレポート

ロボットはどんな作業をしている? 産業用ロボットは近年テレビに登場するなど、目にする機会は増えてきたかも知れません。では、ロボットの実際の作業現場はどうでしょうか。ロボット大国の日本とはいえ、ロボットが導入された工場での勤務経験でも無ければ、ほとんど馴染みが無いのが実情です。 今回は、川崎重工・西神戸工場内にあるロボットショールームの内部をご紹介します。このショールームでは、ロボットの現場での活用シーンを忠実に再現しており、川崎重工の産業用ロボットがどんな作業ができるのか、一通り見学することができます。では、実際の産業用ロボットの活躍を見てみましょう。 一般非公開のショールームに潜入! 川崎重工の西神戸工場は、兵庫県神戸市西区にあります。ここでは油圧機器や舶用機械などに加え、ロボットも生産しています。ご紹介する大規模なショールームはロボットの工場内に常設されており、ショールームスタッフの案内により、様々な産業用ロボットを見ることができます。※導入検討中の企業向け施設のため、一般公開はされておりません。 ロボット工場に入ると、中2階からショールームを一望することができます。ロボットのアーム部分を伸ばした状態で3メートルを超えるような大型のロボットが、これだけ多数、同時に稼働している姿はまさに圧巻です。 密集配置で省スペース化!自動車ボディの組立工程 現在産業用ロボットの活用が最も進んでいる現場は自動車の製造現場です。このショールームでも、最初に目にするのは、自動車ボディの組み立てライン。このブースで使われているBシリーズとCXシリーズは、スポット溶接向けの主力ロボットです。 上の写真の右側部分に設置されているのがBシリーズとCXシリーズのロボットです。赤く囲んである部分の手前側と奥側のロボットでは、それぞれ車種が異なる自動車ボディへの作業を行っています。配置の仕方が異なり、手前には左右に2台ずつ計4台の配置、奥には左右に6台ずつ計12台のロボットが密集して配置されていました。また、車体の下部には、ボディの位置決めを行うロケーターというロボットも設置されています。ロケーターが自動車ボディの位置を調整することで、ひとつのラインで複数車種に対応でき、車種切り替え時の治具変更が不要となるため、大幅なコスト削減が可能となります。 手前の4台はCXシリーズ。中国・蘇州にある”ロボットがロボットを作る工場”で生産されています。アームが軽量で、最新防振制御システムを搭載しているので、スポット溶接特有の短ピッチ動作でも、連続する溶接箇所の間を高速で移動し、溶接箇所ではピタッと止まって作業することができます。 後ろに配置されている12台がBシリーズ。アームが中空構造になっており、ケーブル類を内蔵することによって隣接したロボットとの干渉を回避できます。また、ベースをスリムにすることで狭いスペースに設置できるので、多数のロボットを密集配置することが可能です。これにより、製造ラインの長さを3分の1まで短縮でき、設置スペースや周辺システムの構築などにかかる費用も大幅に削減できるようになりました。コストダウンのためには、様々な工夫がされているんですね。 溶接技術そのものも進化している 自動車の製造において、ボディを組み立てる際の溶接箇所は数千にも上るため、溶接は重要な工程です。この工程に対して川崎重工が開発した、フリクションスポット接合(FSJ)という接合方法をご存じでしょうか。FSJは、ロボットに持たせた接合ツールで金属の板をはさみ、圧力を加えながら高速回転して摩擦熱を発生させることで、軟化した材料が一体化するという方式。アルミニウム合金等の接合に向いていて、自動車工場ではボンネットなどに使われています。このFSJを行っているロボットも、先程ボディ組み立てラインで紹介したものと同じCXシリーズです。 下の動画では作業対象物をセットした後に、ロボット自身でハンド(人間でいう手先の部分)をFSJガンに持ち替えています。 先程のFSJガンを使用してドリルのように高速回転し、摩擦熱で接合するフリクションスポット接合(FSJ)を行っています。 また従来のスポット溶接で必要だった溶接用の電源ケーブルや冷却用のホース、大電流が不要となるため、設備費用やランニングコストを大幅に低減できます。 重労働もロボットで自動化!最大500kgの荷物の積み降ろし 一度にたくさんのビールケースを運んでいたのが、パレタイズ(荷物の積み降ろし)用のCPシリーズ。驚くのは、そのキビキビとした動きの速さです。左の「CP180L」は、1時間に2,050回という搬送能力を持ち、同クラスでは業界最速とのこと。これがどのくらい速いかというと、130kgの物を持ちながら、上下40cm、幅2mの距離を2秒で1往復できてしまうくらいのスピードです。見ているだけで腰が痛くなりそうな作業ですが、もちろんロボットなのでそんな心配はいりません。 下の動画ではロボット「CP500L」が、ビールケースを9個同時に運んでいます。 右のCP500Lは、可搬質量が500kgもあります。CP180Lがビールケース3個だったのに対し、CP500Lは9個も運ぶことが可能。デモはビールケースの運搬でしたが、ハンドを用途に合わせて個別に開発することで、様々な荷物の運搬に対応することができます。 商品を認識し、長時間作業でも素早くミスなく仕分け パラレルリンク型のYシリーズは、高速ピッキングロボットです。デモでは、ビジョンカメラで画像認識を行い、3種類の形(○△□)ごとに整列したり、サイコロを1から6の出た目の数ごとに正確に分類したりしていました。実際の導入現場では、このような複数商品の純粋な仕分けに加えて、同一商品の中から不良品を判定し分類する作業も行っています。 ベルトコンベアでたくさん流れてくるパーツを、○△□の形別に正確に整列しています。   3台のロボットがそれぞれ、1と2、3と4、5と6の目が出たサイコロのピックアップを担当していました。 こうしたパラレルリンク型のロボットは、小さなものを高速で整列するのに適しています。単調な作業を高速で行う場合、人間ならうっかりミスをしてしまいそうですが、ロボットなら集中力が切れることはありません。現在のYシリーズは、食品・薬品・化粧品の、いわゆる「三品」産業と呼ばれる分野で多く活躍しています。 ロボット同士が協力し合いながら念入りに塗装 こちらのブースでは、塗装用のKシリーズが動いていました。自動車ボディの塗装には、外側と内側を塗装する2つの工程があり、ここではロボットのアームに付けた治具でドア、ボンネット、トランクを開閉しながら、4台のロボットが車体の内側と外側の塗装を行っていました。各ロボットには塗装ガンが取り付けられており、車体パーツの開閉と塗装という1台2役を担当しています。ロボットが協調しながら作業をしており、塗装の大部分をロボットのみで行っていました。このロボットは実際の自動車工場現場に導入されています。 下の動画では前のロボットが後部ドアを開け、後ろのロボットが内側を塗装しています。 人との共存!双腕スカラロボット「duAro」の調理デモ 最後のブースでは、双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」が紹介されていました。ここまででご紹介したロボットと大きく違うのは、duAroは人間と一緒の現場で働くことを前提に開発されたということです。モーター出力を抑えているので、安全柵は不要。duAroには衝突検知システムが付いており、人間に接触した場合は即座に停止するようになっています。また、アームには柔らかい素材が使われているので、万が一当たっても痛くありません。下部にはキャスターも付いており、一人でも簡単に移動させることができます。電源とクーラーボックスサイズのエアーコンプレッサーをつなげば稼働できるので、ロボットを置けるスペースが限られる場合でも容易に導入できそうです。 デモでは、寿司を握ったり、ピザを焼いたりする動きを披露していました。このように両手を連携する仕事ができるのは双腕ロボットならでは。食品業界でも、ロボットによる自動化が進展しているので、近所のスーパー店頭やレストランで見かける日も近いかもしれません。 こちらはduAroが手際よく寿司を握っている動画です。 お台場には一般向けショールームも ロボットは様々なところで使われ始めています。従来主流だった自動車産業や電子・電気産業だけでなく、ほかの産業でも利用が拡大。更に、共存型ロボットの登場により、今後は工場を飛び出し、商業施設や家庭での利用も増えていくでしょう。 冒頭でも触れたように、西神戸工場のショールームは一般には非公開ですが、東京・お台場には一般向けのショールームとして「Kawasaki Robostage」を用意しています。ここでは最新のロボットの見学や、ロボットによるアトラクションの体験ができます。予約は不要で、入場は無料。ぜひ足を運んでみてください。 Kawasaki Robostagehttps://robotics.kawasaki.com/ja1/robostage/ ロボット導入を検討してみませんか?