「大きな手術跡を残さずに済む」「術後の回復が早い」「患者の身体にかかる負担を軽減できる(=低侵襲性)」などのメリットがある腹腔鏡下手術。しかし、腹腔鏡下手術には高度な技術が必要で、手術自体が難しいという課題がありました。そこで川崎重工は、自分の手の動き通りに腹腔内の手術器具を動かす”——手術支援ロボットシステムの開発に取り組んできました。
hinotori™ サージカルロボットシステム
1969年に国産初の産業用ロボットの生産を開始し、あらゆる技術やノウハウを有する川崎重工と、検査・診断の技術を有し、医療分野に幅広いネットワークを持つシスメックス株式会社は、2013年に共同出資で株式会社メディカロイドを設立。国産初の手術支援ロボットシステムとして「hinotori™ サージカルロボットシステム」を開発しました。この名称は日本を代表する漫画家で、医師免許を持つ手塚治虫先生が生涯を通じて描き続けた名著「火の鳥」より採用されています。
複数ユニットで構成される「hinotori™」
hinotori™ は「サージョンコックピット」「オペレーションユニット」「ビジョンユニット」の3ユニットで構成されます。
サージョンコックピット
3Dビューアをのぞき込みながら、手・足で内視鏡カメラや手術器具を操作します。執刀医の姿勢に合わせることができる人間工学に基づいた設計で手術時の負担を軽減。ストレスフリーな手術をサポートします。
オペレーションユニット
サージョンコックピットからの操作で手術を行うオペレーションユニット。ロボットアームには、川崎重工の双腕スカラロボット「duAro」のテクノロジーが応用されています。人間の腕に近いコンパクトな設計により、アーム同士、もしくはアームと助手の医師との干渉を低減。円滑な手術をサポートします。
ビジョンユニット
サージョンコックピットに表示される映像の統合や音声のコントロールをします。高精細な内視鏡画像を3Dで映し出すとともに、執刀医と手術スタッフとの円滑なコミュニケーションをサポートします。
通信技術を組み合わせた遠隔手術
hinotori™ に通信技術を組み合わせ、様々な関係者様のご指導・ご協力のもと、遠隔手術の実証実験を開始しました。
この実証実験の先には、熟練医による地方への遠隔での外科手術や、地方の若手外科医の遠隔指導・遠隔支援などができる仕組みを見据えています。地方の外科医療における人手不足の改善、更には日本の外科医療の均てん化を目指していきます。