産業用ロボットの「特別教育」とは? ロボットスクールを開催している川崎重工が解説

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産業用ロボットの利用に必要な「特別教育」

自動車と同じように、ロボットにも”教習所”があるのをご存じですか?この場合のロボットとは、ロボットアームを連想するような産業用ロボットです。最近は、人と同じ空間で働く「協働ロボット」が普及しつつあります。このタイプは、万が一人とぶつかっても痛くない素材でできていたり、衝突を感知すると直ちに止まったりできます。一方で、工場の製造現場に導入されるような産業用ロボットは、強い力を持ち、高速に動くため、正しく理解してから使用しないと事故などに繋がる恐れがあります。こうした事態を未然に防ぐために、ロボットの”教習所”にあたるスクールに行き、「特別教育」というものを受ける必要があります。

ここでは、特別教育について解説し、川崎重工のロボットスクールで行っている特別教育についてご紹介していきます。

「特別教育」とは何か?

特別教育は、労働者の安全・衛生のために行うものです。法律では、「労働安全衛生法」の第59条第3項(※1)で定められており、そこには以下のように記されています。

(※1)厚生労働省:職場のあんぜんサイト

労働安全衛生法:第59条第3項

事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

この「特別の教育」が特別教育にあたります。文面にある通り、特別教育を実施するのは事業者(経営者)の義務となっており、もしこれを怠ると、労働者だけではなく事業者も罰せられることになります。業務に携わる労働者の安全を守り、労働災害を防止するものであるため、事業者の責任において実施が必要です。

特別教育を必要とする業務は、厚生労働省令である「労働安全衛生規則」第36条(※2)で定められており、アーク溶接や、最大荷重1t未満のフォークリフトの運転など、49の業務(2018年4月時点)が該当します。

(※2)中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター

産業用ロボットに関連する項目としては、第36条の第31項で「教示等の業務」(ティーチング)、第32項で「検査等の業務」(メンテナンス)が定義されています。詳しくは後述しますが、ロボットを動かす場合は第31項(教示)、ロボットを点検する場合は第32項(検査)に基づいた特別教育が必要になるわけです。

産業用ロボットの特別教育で身につくことは?

産業用ロボットの特別教育で実施すべき内容については、「安全衛生特別教育規程」の第18条(教示)と第19条(検査)で科目と時間が定められています。

産業用ロボットの教示
産業用ロボットに作業を教示するための装置(ティーチペンダント)

教示は、ロボットに対し、位置や速さ、動作の順番などを教える業務です。溶接やハンドリングなどの作業をロボットで自動化するためには、必須の工程と言えます。特別教育では、以下の学科と実技により、教示の方法や危険性などについて学びます。

産業用ロボットの検査

検査は、ロボットの点検・調整・修理など、メンテナンスを行う業務です。メンテナンスのためには、ロボットの使い方だけでなく、各部の構造や部品の種類なども詳しく知る必要があるため、以下のように、必要な時間は教示よりもやや長くなっています。

カワサキロボットスクールでの特別教育

前述の通り、産業用ロボットの特別教育は事業者が実施する必要がありますが、事業者に代わってメーカーや自治体が開催する講習会を利用することもできます。ここから先は、川崎重工の「カワサキロボットスクール」で行っている特別教育の内容について、ご紹介しましょう。

カワサキロボットスクールは、関西(兵庫県)、中部(愛知県)、関東(栃木県)の3カ所で開催しています。ハンドリング、ピッキング、塗装、スポット溶接、アーク溶接、duAro(人共存)と、用途ごとにクラスが分かれていて、教示は「ベーシック」コース、検査は「メンテナンス」コースで学ぶことができます。

※カワサキロボットスクールの受講対象者は、川崎重工のお客様に限定されています。一般の方は受け付けていませんのでご注意ください。

カワサキロボットスクールは、1クラス4~8人の少人数制で実施。理解度に大きな差がある場合には、さらにクラスを分けることもあります。講習の内容は、お客様からのヒアリングにより調整し、要望があればカリキュラムに無い内容でも、柔軟に対応することが可能です。

ロボットには様々な種類がありますが、カワサキロボットスクールでは、なるべくお客様の導入機種に近いものを用意しています。実際に業務で使うロボットに近い方が、より実践的な教育ができます。これは、ロボットメーカーが実施する特別教育ならではのメリットですね。

特別教育でロボットの安全な利用を!

産業用ロボットの特別教育は、労働者の安全を守るために欠かせないものです。自動車の運転免許のように、試験を受けて合格が必要となるものではありませんが、業務開始前に、必ず受講するようにしましょう。

カワサキロボットスクールでは、お客様がよりロボットを使いこなせるよう、特に実技に力を入れた特別教育を行っています。内容について、何か気になる点がありましたら、お気軽に弊社営業までお問い合わせください。

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