これから人口減少時代に入る日本。これまで製造業など一部でしか利用されてこなかったロボットは、今後さまざまな業界で求められることが予想されます。その1つがサービス業界。慢性的な人手不足に加え、コロナ禍により企業の経営環境は厳しさを増しています。サービス業界にロボットを。そのために川崎重工ではサービスロボット、Nyokkey(ニョッキー)の開発を行っています。
Nyokkeyは自律走行型サービスロボットです。人と一緒に働くことを想定して、人と同じように移動して、2本の腕で作業をします。飲食店における配膳・下膳。見回りによるビルの清掃業務のサポートなど。さまざまなシーンへの適応を想定しています。周囲の人の安全を考慮しながら、軽作業や扉の開閉が可能なパワーに設計されています。
Nyokkeyの特長
LiDAR✕ビジョンセンサーで位置把握
LiDARでレーザーを周囲に照射し、その反射からマップを作成して、自らの位置を把握します。加えて、ビジョンセンサーで物体認識することで人との衝突を避け、安全に自走することができます。
遠隔協調システム「Successor」
遠隔操縦装置であるコミュニケーターを使用し、ロボットの遠隔操縦を可能にする遠隔協調システムSuccessor。自動化が難しい動作を行う場合や、エラーを起こした際に自動運転から遠隔操縦に切り替えることで半自動化を実現し、イレギュラーなシーンにも対応することができます。遠隔操縦で行った動作を記憶させることで、人からロボットへ、ロボットから人への技能伝承を実現します。
自律走行「AMR(Automonous Mobile Robot)」
AGV(Automatic Guides Vehicle)があらかじめ設定したルートを走行するのに対して、ルートの設定をすることなく自律走行が可能なAMR。目的地を設定することで、自ら作成したマップ情報と周囲の環境を元に、最適なルートを判断して走行します。
共創プラットフォームとしてのNyokkey
Nyokkeyはニーズに合わせて適応させていくことを前提としています。サービスロボットに求められる能力や性能は、産業ロボット以上に多岐にわたることが想定されます。川崎重工が開発したNyokkeyシリーズのハードウェアを前提に、さまざまなパートナーと連携しながらニーズに合ったソフトウェアを早いサイクルで開発していく。Nyokkeyはロボットでありながらプラットフォームでもあります。
Nyokkeyの開発ストーリー
Nyokkeyの開発がはじまったのは2021年春。新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、入院中の感染患者の見守りロボットとして開発が進められました。初期のNyokkeyは、病室を巡回することで、患者の有無、容態の変化を遠隔で確認可能にするというものでした。
医療従事者の感染リスクを減らし、逼迫していた医療の現場をサポートすることを目的としていたNyokkey。その開発はいち早く進められ、開始から1年足らずで完成。
その後、さらなる改良が進められ、サービス業界で広く利用することを想定された現在のNyokkeyに至ります。
Nyokkeyのユースケース
藤田医科大学病院 |サービスロボットの実証実験
2022年1月、川崎重工は藤田医科大学病院とスマートホスピタル構想の実現に向けた取り組みの1つとして、Nyokkeyの実証実験を開始。
フェーズ1では同一フロア内での検体や医薬品などの院内物資搬送と、人のエレベータ操作補助を前提とした別フロアへの移動が行われました。
フェーズ2となった現在では、自律走行機能・エレベータ連携機能を有したアーム付きロボットによる別フロア間搬送の検証が行われています。
フェーズ3では、多用途アーム付きロボットによる病院内作業と病院側システムとの連携検証が行われる予定です。
羽田イノベーションシティ | ロボットカフェの実証実験
羽田イノベーションシティ内にロボット情報の発信拠点として川崎重工が2022年4月末に開設予定のFuture Lab HANEDA。その中にあるロボットカフェ「AI-SCAPE」において、Nyokkeyがトレーや食器を認識して配膳・下膳を行う検証を実施予定です。
産業用ロボットの世界で50年以上の歴史を有する川崎重工。今後は「AI-SCAPE」で実証を行うサービス業界での適用をはじめ、さまざまな現場にロボットを提供することで、産業ロボットメーカーの枠を超えて、ロボットの社会実装を推進していきます。