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協働ロボット

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SDGsに貢献する協働ロボット duAroがリサイクルの現場を変える!

産業用ロボットの分野で、一つのトレンドになっているのが協働ロボットです。安全上、人間とロボットを物理的に隔離しなければいけなかった従来の産業用ロボットとは異なり、協働ロボットは人と同じ空間で肩を並べて作業することが可能。コンパクトでフレキシブル、かつ簡単に使える“人共存型ロボット”は、ロボット導入のハードルを引き下げ、食品、化粧品、医薬品といった三品産業など、これまでロボットが活用されてこなかった領域でも新戦力として活躍しています。川崎重工 エネルギーソリューション & マリンカンパニー プラントディビジョン 環境プラント総括部 環境プラント部 プロジェクト二課 主事の中野 裕氏に、協働ロボットが広げる新しい現場について伺いました。 協働ロボットを活用したごみ処理のソリューション 50年以上にわたり産業用ロボットの世界をリードしてきた川崎重工も、2015年に双腕のスカラロボット(水平方向にアームを動かすロボット)の「duAro=デュアロ」をリリースしています。人に代わるのではなく、人と共に働くロボットとして開発されたduAroは、お弁当を盛り付けたり、口紅の蓋を閉めたり、非接触式体温計で検温をしたり、仕事の幅をどんどん広げています。 人一人分のスペースに設置出来るコンパクト性、人と肩を並べて作業出来る安全性、細かい作業に最適な動作の正確性。そういったduAroの持つ特長を活かす、新しい“職場”が誕生しようとしています。それが川崎重工が開発した「資源ごみ選別作業支援システム」。リサイクルの現場をサポートする、協働ロボットを活用したまったく新しいソリューションです。 ごみの適切な処理は、都市機能の維持において生命線ともいえる問題です。とりわけSDGsの重要性が高まる昨今では、ごみの再資源化=リサイクルは地球環境保全のために欠かすことが出来ません。日本では、1991年10月25日に「再生資源の利用の促進に関する法律(通称:リサイクル法)」が施行され、資源の再利用が積極的に推進されるようになりました。 人の負担が大きい「ビンのリサイクル」 我々にとって身近な再生資源といえば、ペットボトルや缶、ガラスビンといった容器類です。ペットボトルなら医療や文房具に、アルミ缶なら自動車の部品や鍋・フライパンなどのアルミ製品に、スチール缶なら家電や建設資材に、ビンなら道路のアスファルトやタイル、断熱材にと生まれ変わります。 リサイクルにあたっては、それぞれの種類別に選り分ける作業が必要になります。各処理施設では磁石やふるい、風の力など、機械による選別作業を行っていますが、精度を向上させるため、人手による選別が依然として多用されているのが現状です。ベルトコンベヤで流れてくる対象物を的確にピックアップする作業には相当な集中力が必要、かつ立ち姿勢も強いられるため、作業者の体への負担も小さくありません。 中でも、ビンの選別ラインでは一般的に「茶色、無色、その他の色」の色別に選び出すことが必要(透明ビンと茶色ビンは再生ビンの原料や板ガラスとして、その他の色のビンは土木材料として主に生まれ変わる*1)。しかも一升瓶のような重量物から、栄養ドリンクに多い小型ビンまでサイズも様々です。割れた状態で搬送されるものもあり安全面でも注意が必要になるため、ペットボトルや缶に比べて負担が大きい現場となっています。 *1:公益財団法人日本容器包装リサイクル協会「ガラスびんリサイクル製品(再商品化製品利用製品)内訳」より ビンの選別が得意なオリジナルAIを搭載 こういった課題を解決するべく、川崎重工が開発したのが協働ロボットを使ったビンの選別ラインシステムです。duAroの持つ特長に注目したのは、川崎重工 エネルギーソリューション & マリンカンパニー プラントディビジョン 環境プラント総括部 環境プラント部 プロジェクト二課 主事の中野 裕氏。「リサイクル施設の作業は人力による部分が少なくありません。作業員の方の負担軽減に貢献するために、ロボット技術を使って自動化を図れたら。そう考えました」と語る中野氏は、ロボット事業を統括するロボット ディビジョンにまず相談。自社のロボットラインナップを改めて検分し、duAroの性能と特長に着目したといいます。 当該システムを構成するのは、協働ロボットの「duAro」、対象物を掴み上げる「把持部」、そして対象物を識別する「認識部」という3つの要素。duAroは、2018年に追加発売した「duAro2」を採用しています。duAro2のアームの先端に装着する把持部には、UFOキャッチャーのように開閉式の爪で挟むタイプではなく、真空吸着式のグリッパーを採用。対象物を“つかむ”のではなく“吸い付ける”ことで、より確実に、より安全に多様な形状・重量・向きのビンをキャッチすることを可能にしました。密着状態で流れてくる混在したビン同士の中から、ピンポイントで対象物を持ち上げることが出来るのも利点です。 「茶色、透明、それ以外」のビンを見分ける“目”となる認識部には、ビンの認識に特化した自社開発のオリジナルAIを搭載。カメラで撮影した画像データに基づき、AIが色や形状の違いなどを認識するとともに、吸着すべきポイントを判断します。ビンの選別が得意なオリジナルAIというユニークなテクノロジーを開発したのは、総合エンジニアリング企業である川崎重工が誇るテクノロジーの“シンクタンク”、技術開発本部。実際の資源化施設で行った実証実験でも、搬送されてきた対象物の色と形状を「99%以上」の正答率で識別出来ることを証明しました。 「資源ごみ選別作業支援システム」の具体的な流れは次のようになります。①ラインの上流から投入されたビンは、ベルトコンベア上を流れながら「認識部」に移動。②オリジナルAIがビンの色や形などを認識したうえで、つかみ取るべき対象物と吸着ポイントを判別。③データに基づき、duAroがグリッパーで対象物を吸着し、各投入シュート上へアームを移動、投入口上部で対象物をリリースし、シュート内に落とす。このとき、duAroは2本腕を活かして、“右手”と“左手”で別々の色のビンを取り扱うことも出来るので、シュートをduAroの左右に1基ずつ据えることが可能なのもポイントです。 まったく新しいごみ処理のカタチ duAroを活用することで得られるメリットはたくさんあります。まず、一升瓶などの重量物はduAroに担当させ、それ以外を人間が受け持つなど、人とロボットが作業を分担して同一ライン上で一緒に働くことが出来ること。既存の手選別コンベヤのラインを改造することなく設置が可能になることも利点です。また、duAroは簡単に移動が出来るので、作業者の間に置いたり、上流側・下流側に据えたりと、レイアウトの自由度が高いのも特長でしょう。もちろん、休まず働けるのもロボットならでは。作業員が急に休んでしまったときに、その穴埋めとしてロボットを設置したり、感染症対策の緊急対応時にもロボットに作業を任せることが可能になります。「ごみ処理施設は重要なインフラ設備のひとつです。例えばコロナ禍であっても、処理を継続させなければなりません。だからこそ今後はロボット化が必要。ロボットを導入することで、住民の方々へ安心をお届け出来ると考えています」 加えて、システム構築が比較的短時間で行えるのも長所のひとつ。duAroはキャスター付きの台車でコロコロと移動することが可能なため特別な重機も必要なく、調整を含めても2〜3日で設置が完了するという簡便さ。何日間もラインを止めることが出来ない施設には非常に有用なフレキシブル性を持っています。 日本全国津々浦々に存在するごみ処理場ですが、中野氏は「焼却施設では自動化が進みつつありますが、リサイクル領域では施設の運転に関わる作業の多くを人手で行っている」ことに着目。そこに一石を投じるのがこの「資源ごみ選別作業支援システム」です。既に本システムの各施設への提案はスタートしていて、目下の目標は「2022年3月期の初受注」(中野氏)。導入が出来たら設置数を拡大するとともに「各施設のデータを収集して技術をさらに進化させ、将来的には無人化も可能なシステムを完成する」というビジョンもあるそう。 ごみ処理施設の開発を長年行ってきたノウハウ。ロボットメーカーとしての技術。AIを自社開発できるポテンシャル。その全てを兼ね備えた川崎重工だからこそ実現した、まったく新しいごみ処理のカタチ。ロボットと人間それぞれが役割分担し、より豊かな社会を共に築く。そういう明日に向けて、またもう一歩、私たちは前に進むことが出来たようです。

協働ロボットとは?―人間の新しいパートナー、協働ロボットが変えるものづくりの現場

生産工程の自動化を実現する産業用ロボットが誕生したのは、いまからおよそ60年前。以来、日進月歩で進化してきた「はたらくロボット」の世界で、近年とくに注目を集めているのが協働(ヒト共存)ロボットです。人に“代わる”だけでなく、人と“共に”働く存在へ。今、協働ロボットがものづくりの現場を変えようとしています。 協働ロボットは、ものづくりの世界に誕生した期待の星。 車、スマホ、テレビ、洗濯機に冷蔵庫。私達の身の回りにある、さまざまな製品を高い品質で大量に生産する工程で、産業用ロボットの存在が欠かせません。マニピュレータ(アーム)と制御盤(コントローラー)をもつ産業用ロボットは、アーム先端の人間の手首に当たる部分に、塗装スプレー、溶接機器、ものを掴むハンドなど、さまざまな種類のものを取り付け、それに合わせた動作をプログラミングすることで、塗装、溶接、組み立てといった製造ラインでの作業から、仕分けや運搬といった作業まで、多くの現場で広く活用されてきました。単調な作業だけでなく、たとえば作業員が重量物を運ぶ過酷な環境や、長時間、高速・高精度が要求される作業でも、その性能を遺憾なく発揮しています。 従来、産業用ロボットを含めた生産現場の中のすべての「動く機械」は、人の安全を守るため、人の作業領域と機械の動作範囲を分離することが法律で義務づけられていました。そのため、産業用ロボットを設置する場所ではロボットの動作範囲を「柵」で囲う必要があったのです。 ところが、欧米ではセンサーやソフトウェア技術の進歩に合わせ、安全対策を講じればロボットと人が安全柵なしで共存することが認められるようになりました。そして日本でも平成25年に法律が緩和され、欧州と同様の基準の対策(ISO 10218-1/-2:2011)を行えば安全柵なしで産業用ロボットを使用できるようになりました。それをきっかけに、世界のロボットの6割を生産する日本のロボットメーカーが、こぞって「協働ロボット」の開発をはじめたのです。 協働ロボットのメリット これまでは主に自動車、電機、電子をはじめとする、いわゆる規模の大きいメーカーの工場を中心に使われてきた産業用ロボット。導入には大規模な周辺設備や設置工事が必要となり、かかるコストも甚大でした。一方、「ちょっとした作業をロボットに代わってほしい」「今までロボットを使ったことがない現場でも活用できるロボットはないか」「スペースには限りがあるが、ロボットを導入して生産性を向上させたい」という声は決して少なくありませんでした。そうした要望に応えて生まれた新しいパートナーが、協働ロボットなのです。 協働ロボットには、①柵などの安全設備を必要としないので、生産現場の省スペース化を図れる ②そのため、専用設備が少なくなり、初期投資を抑えることができる ③将来生産工程を変更するときも専用設備が少ないので簡単に対応できるなど、従来の産業用ロボットにはないメリットがあります。 人と肩を並べ、細やかな仕事にも対応できる協働ロボットは、既存の設備、製造ラインを大幅に変更することなく、人とロボットを適材適所で組み合わせて配置することで、生産効率をアップするだけではなく、これまで自動化されていなかった、より小規模な現場や製造現場以外での自動化も実現する可能性を秘めています。 さまざまな現場で活躍する協働ロボット さまざまな協働ロボットの中でも、たとえば川崎重工の協働ロボット「duAro(デュアロ)」は、2本のアームを持ち、人ひとり分の作業スペースで設置できるため、簡単に人と置き換えることができます。また、①万一の人との接触などに備えた優れた安全システム ②直接アームを手で動かしティーチングできるダイレクトティーチ ③タブレットでのプログラミング、といったロボット初心者でも簡単に使用できる特長を活かし、ロボット導入の敷居を下げて、新しい製造現場へどんどん進出しています。 たとえば、食品業界では、人の代わりに2本のアームを使って、人の動作と同じ動きでお弁当の盛りつけや、おにぎり・サンドウィッチなどのばんじゅう詰め、食器洗いを担当。化粧品製造の現場では、口紅のふたを閉めたり、スポンジや説明書とファンデーションをワンセットにまとめる作業などで活躍しています。大きな製造レイアウトの変更なしで人と入れ替わることができるduAroは、上記のような製品サイクルが短いために専用機を導入するのが難しく、人手に頼らざるをえなかった製造現場でも活躍できるのです。 また精密電子機器分野においては、既存の産業用ロボットの場合、製品ごとに正確な位置決めのための治具が必要でしたが、2本のアームを持っているduAroは、片アームで位置決め治具の役割を果たし、もう片アームで部品を実装する、といった作業が可能です。そのため、治具製作費用を抑えることができるのです。 そしてコロナ禍の現在では、博物館への来館者に対して、片アームがゲートの役割をし、もう片アームでお客様の検温を自動で行うduAroも登場。このように時代の要請にフレキシブルに対応できるのが協働ロボットの魅力であり、可能性でもあるのです。 これから広がる協働ロボットの市場 これからの製造現場では、さらなる人手不足問題や多種少量生産への対応が要求されるため、産業用ロボットの需要は増大していきます。その中でも協働ロボットは既存の産業用ロボットに比べ手軽に導入が可能なため、活用の機会がますます増えていくことが期待されます。また今後はセンサーやビジョンなど、つまりヒトでいう“感覚”のテクノロジーの進化により、さらに人に近い作業をこなす協働ロボットも増えていくことでしょう。そして、ゆくゆくはAI(人工知能)が発達することで、ロボットが動作を自分で学習し、プログラミングなしに作業を自動化できるといったことも可能になるかもしれません。協働ロボットが人のパートナーとして、本当の実力を発揮するのはこれからなのです。

自動検温もお手の物。New Normal時代の協働ロボット「duAro」

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に大きなダメージを与えました。しかしその一方で、コロナ禍が浮き彫りにしたニーズも少なくありません。たとえば「非対面・非接触」が求められる新しい社会では、ロボットが活躍する“職場”が増えています。 コロナ禍で“ロボットの働き方改革”が進む? 世界国際ロボット連盟(IFR)のミルトン・ゲリー会長は、今後の“ニューノーマル”に合わせた変化に伴い、「新しい用途や開発中のソリューションへの需要が高まり、ロボットメーカーはそれに対応することになる」と語っています。たとえば医療系の現場では、薬のデリバリーや殺菌・消毒に従事するロボットが増加。無人警備や自動清掃、さらには案内や配膳といった“おもてなし”サービスを担うロボットも続々実装されています。焼肉の和民は配膳ロボット「PEANUT」(Keenon Robotics)を導入、カラオケのJOYSOUNDやホテルの受付デスクには「ロボホン」(シャープ)が登場し、品川区役所では23区初の窓口担当ロボット「ロボコット」(タケロボ)が就任。ロボットの社会進出が止まりません。 引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000051985.html ところで経済産業省はロボットを「産業用」と「非産業用」に分類しており、前述の配膳や案内、警備などで活躍しているのは非産業用、いわゆるサービスロボットです。しかし、これからの新しい社会では「ものをつくるロボット」、「ものをつくらないロボット」と、単純に境界線を引くことはできなくなりそうです。アタッチメントやソフトウェアを変えるだけで、活躍する職場をフレキシブルに移動できるロボットが生まれているのですから。 協働ロボット「duAro」が越える境界線 双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」は、50年以上にわたり産業用ロボットの世界を率いてきた川崎重工が開発。人ひとり分のコンパクトなボディ(筐体)に2本のアームを備えたduAroは、“人の代わり”だけではなく“人と一緒に”働く、人共存型ロボットとして誕生しました。 「小型」で「移動しやすく」「簡単に使える」duAroは、ものづくりの現場におけるロボット導入のハードルを引き下げました。「生産品種を頻繁に変更する」、「多品種をすこしずつ生産したい」など、従来の産業用ロボットではなかなか対応しづらかった“声”に応えるフレキシブル性も強みとなり、2015年の発売以来、電子機器や食品、化粧品など多彩なラインに従事しています。そしていま、その器用な両腕と、人と共存可能な機能を活かして、ものづくり以外の現場にも活躍の場を広げています。 完全非接触&完全自動で来場者の検温を実施 新型コロナ感染症拡大予防の観点から、現在多くの事業者や職場では、従業員や訪問者が敷地内へ入る前に検温を実施しています。非接触式体温計を入口で「おでこにピッ」とする光景はいまや日常になりました。そして、2020年夏に登場したのがこの「おでこにピッ」を人の代わりに行なうduAroです。すでに「神戸海洋博物館・カワサキワールド」(兵庫・神戸)や「Kawasaki Robostage」(東京・お台場)の受付に実装されています。 来場者が計測開始用のセンサーに手を近づけると、duAroが反応。温度計測用センサーを持った右手が来場者のおでこの高さに合わせてピッと計測してくれます。体温が規定値以下なら左手に備えたバーを持ち上げて来場を促し、体温が規定値を上回った場合は左手を上げずに通せんぼ、係員を呼び出すという仕組みになっています。一連の動作はすべて非接触で行なうので、係員と来場者が触れあったり飛沫を飛ばしあう、といったリスクが最小限に抑えられるわけです。 人と共存するための高い安全性 duAroシリーズならではの安全面への配慮も、“自動検温”に携わることのできる理由のひとつ。人と並んで作業を行う協働ロボットとして開発されたduAroは、腕の部分を柔らかなウレタン材のクッションで覆っているので、万一人とぶつかったときにも怪我をしないよう配慮しています。さらに、接触時には衝突を検知して即座に停止。使用者を守るために、duAroはあらゆる場合を想定して安全性を確保しているのです。 国内産業用ロボット分野のパイオニアである川崎重工が「ロボットの次なる時代」、すなわちロボットが人と共存する未来を見据えて開発した協働ロボット。dual(ふたつ)とArm(ロボットアーム)そしてrobotを組み合わせた名前をもつduAroには、産業用と非産業用のふたつの分野、人と機械のふたつの世界を繋げる役割も与えられているのかもしれません。 注:2009年の102万1000台に対し、2019年は272万2000台に増加。(国際ロボット連盟「World Robotics 2019」より) 【参考文献】

川崎重工の人共存型双腕スカラロボット「duAro」は、女子大生の私でも簡単に使えた!01

川崎重工の人共存型双腕スカラロボット「duAro」は、女子大生の私でも簡単に使えた!

こんにちは! 女子大生の里見です。私は今、兵庫県・神戸市西区にあるロボット工場に来ています。 今日の取材はロボットのプログラミング方法を学ぶというものです。 私はね、編集長に言ったんですよ、「機械音痴だ」って。そうしたら「里見さんほどの機械音痴でも操作できるみたいだから取材してきて」って言われたんですよ。私は返事してやりましたよ、「どうなっても知りませんよ」って。 そんなこんなで、開き直ってやってきたのは、日本でも有数のロボット企業・川崎重工の西神戸工場です。 50年間に渡り、産業用ロボットで世界中の生産性向上をサポートしてきた川崎重工。工場内にある一般非公開のショールームでは、同社が開発した自動車の溶接や塗装に使われる大型のロボットアームから、 創薬時の分注作業を行なうような細かい作業ができる小型のロボットアームまで、様々なロボットを間近に見ることができます。 ロボット見学でつい浮かれてしまっていたのですが、本番はここから。私はここにロボットを操作しに来たのでした。 今回操作するのはこちらのロボットです! 人共存型双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」です! 川崎重工にある80種以上のロボットのラインナップの中でも、過去にない速度で販売数を伸ばしているというduAroシリーズ。すごい人気者のようです。 ・・・ていうか、ガチのロボットじゃないですか。おもちゃのロボットですら手こずるのに。 安全にも配慮された「duAro」 ショールームからカワサキロボットスクールに移動して講習開始。 まずはロボットを操作する上で大切な「安全」について学びます。産業用ロボットは、過去に世界中で様々な不慮の事故を起こしてしまっているため、「ロボットの周囲に柵を設けないといけない」など、使用者を守るための数多くの決まりができました。 でもここにいる「duAro」はなぜか柵に囲まれていません。実はduAroは安全を担保するための様々な機能や柔らかな表面素材の採用によって人の隣で働くことができるんです。 外装はウレタンで柔らかく、力も強すぎず、万が一ぶつかっても衝突検知機能がロボットを停止させ、事故を防止してくれるので安心、安心。 duAroは、二つの腕を持ち、腕が水平に移動する「双腕スカラロボット」というジャンルのロボット。人ひとり分のスペースに設置できるようなサイズが特徴的で、かつ台車がついているため簡単に移動させることもできます。 これまでの産業用ロボットは、広々としたスペースを確保して柵を設置する必要があり、小さい工場では導入が難しかったのですが、duAroはこの「小型」で「移動可能」で「安全」ということで、過去にロボットを導入したことがなかったような工場にもどんどん導入されているのです。 さらに一番の特長は「簡単に使える」ことだと言います。さて、本当に私でも使えるのかな? duAroを操作してみる 通常、産業用ロボットを操作するには、専用のティーチペンダントを使う必要があります。しかし「duAro」はAndroidのタブレットから操作が可能です。 duAro本体とWi-Fiで接続し、専用アプリ「Robot Teacher2」から操作するだけ。視覚的にもわかりやすいUIとタッチ操作により、直感的なロボットの操作が可能。リアルタイムに動かすことや、プログラミングをすることができるのです。 それでは、duAroの操作方法を勉強していきます! サポートしてくださるのは、スクール講師のカワサキロボットサービス 大越智 陽香さんと、川崎重工の関口斐子さんのお二方。 おふたりとも優しすぎて、すぐに大好きになりました。 大越智さん:ここのボタンを押すと右腕が上がりますよ。 里見:ふむふむ。あ、本当だ! 腕が上がった! 大越智さん:こっちを押すと左腕が横に動きます。 里見:あ、動いた! こうすれば両手を動かせるんですね。 アプリからプログラミングができるだけでなく、「ダイレクトティーチ」をすれば、duAroの腕に触れて直接動かすことでプログラミングを作ることもできます。腕を動かして、腕の位置を記録。これを繰り返すだけでプログラミングができるのです。制御可能な関節が8個(片腕4自由度)もあるので、一つ一つプログラミングしていくのは時間がかかってしまいますが、ダイレクトティーチにより大きな動きをすぐに作ることができます。 細かな調整はアプリ画面から、大きな動きはダイレクトティーチで作っていくことで、プログラミングの速度も上がります。 ちなみに、ダイレクトティーチで腕の位置を記録していく際に、A地点からB地点までの腕の移動はduAroが最適なルートを選んでくれるため、スムーズな腕の動きになります。また、2本腕同士がぶつかりそうな時には自動で止まってくれるため、壊れてしまう心配などもありません。 昼食休憩を挟んで講習を受けること1時間半。「里見さん覚えが早いですね!」と言ってくれる褒め上手なお姉さん方のお陰で、楽しくプログラミングの方法を学ぶことができました。 普段スマホを操作してる感覚で、自分と同じくらいのサイズのロボットを操作できるのは、新鮮な体験でした。続いて自作のプログラミングに挑戦していきます! プログラムを自作、duAroにチョコレートを詰めてもらう バレンタインが近いということもあり、チョコレートを詰める作業をduAroに行なってもらうプログラミングに挑戦してみます!市販のチョコレートを、duAroが吸い上げて、かごの中に入れていくという作業です。 duAroは手先を交換することができるので、物を掴むだけでなく、吸着させることができます。 1時間程度でプログラミングが完成し、「もっと早くするには」「もっと効率的にするには」と試行錯誤をして完成したのがこちらです。 薄くて大きい紙を吸い上げることができるのはduAroが双腕だからこそ。そして危険が少なく、人が近くで働けるからこそ、協働作業ができるのです。 後日・・・ 後日、川崎重工さんの東京本社に出向き、ロボット事業を統括する川崎重工株式会社 取締役 常務執行役員 橋本康彦さんに、バレンタインのチョコレートをお渡ししてきました! duAroを開発してくださり、ありがとうございました…。こんなに私がお姉様たちから褒めて頂いたのも、duAroがあったお陰です。 duAroと私が共同作業で詰めたチョコレート、ぜひ美味しく召し上がってください! duAroのポテンシャルはこんなものじゃない 機械音痴の私が、たった1時間のプログラミングでここまで作ることができ、自分でも驚いていますが、もちろんduAroのポテンシャルはこんなものではありません。カメラと組み合わせたり、AIと組み合わせることで、様々な動きが可能になるのです。 ショールームにはduAroが実世界でどう使われるかを体験できるデモスペースもありました。 duAroによる似顔絵 duAroは似顔絵だってお手のもの。外部カメラを取り付け、撮影した顔写真をもとに、duAroが似顔絵を描いてくれるというシステムを体験しました。 およそ1分30秒くらいで似顔絵が完成。双腕だからこそ素早く描けるのですね! ちなみに、この似顔絵を描いてくれるduAroは、東京・お台場にある川崎重工のショールーム「Kawasaki Robostage」でみなさんも体験できるようです! 関連サイトKawasaki Robostage スマホの保護フィルムを貼るduAro 不器用な私には苦手な「スマホの保護フィルム貼り」。それをduAroは完璧にこなしてしまいます。 スマホ画面を綺麗にしてから、フィルムを持ち上げ、剥がし、貼り付け、上から抑えていく。完璧な動作でスマホに保護フィルムを貼りました。人間ではこんなに綺麗にフィルムを貼ることなんてできませんよね。 他のシステムと連携していくことでますます可能性が広がるduAro。人間と一緒に働けるこの双腕ロボットに「何をさせてみたいか」と考えるだけでワクワクしてきます。 西神戸でのロボット体験はこれにて終了。丁寧に教えてくださる川崎重工の皆様のおかげで、機械音痴な私でも本当に操作することができました! 記事掲載元:ロボスタ 2019年2月14日より転載 ロボット導入を検討してみませんか?

duAro2新登場 ― 人と共存するロボット「duAroシリーズ」はどう進化を続けるのか01

duAro2新登場 ― 人と共存するロボット「duAroシリーズ」はどう進化を続けるのか

新たに登場した「duAro2」 2018年6月、人共存型双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」シリーズの新モデルとして、「duAro2」が発売されました。duAroとは、2015年6月に川崎重工が発表した協働ロボット。人間と同じ2本の腕を持ち、人間と同じ空間で作業ができます。水平方向の動きに特化しているシリーズ第一号のduAro1に対し、duAro2は、アームの上下ストロークが15cmから55cmに、可搬質量(片方のアームで持ち上げることのできる重さ)が2kgから3kgになるなど、duAroシリーズがよりパワーアップしました。 duAro1の開発当初から関わり、”duAroシリーズの父”とも言える川崎重工の長谷川省吾氏(精密機械・ロボットカンパニー ロボットビジネスセンター FAソリューション第二総括部 総括部長 理事)に、duAro2開発の狙いと背景について、詳しく話を聞きました。 duAro1だけでは自動化できない溝をduAro2が埋める とことん安全と使いやすさを追求したduAro1は、発売以来、電子基板のネジ締めやおにぎりの番重詰めなどロボットが必要とされていた現場で活躍しています。duAro1の誕生については、こちらの記事で特集しています。ぜひご覧ください。 <duAro1 開発ストーリー>双腕スカラロボット「duAro」 人共存型ロボット開発の裏側 duAro1の発売後、長谷川氏は生産現場において、まだ高い自動化のニーズがある工程があることに気が付きました。それが、水平動作に特化するduAro1では対応が難しい「箱詰め作業」です。 「小型電子機器製品などを製造する工場の生産ラインでは、ほとんどの場合、最後に出荷に向けた箱詰めが行われます。この作業は依然として人手作業が一般的です。duAro1の上下方向の可動範囲は15cm。段ボールの深さは40〜50cmもあるため、ダンボールの底まで届きません。 かといって、可動範囲を長くするため、現在の構造のまま上下方向のアームを延長すると、50cm以上の長さが必要になり、作業の邪魔になってしまいます。ここにduAro1では自動化できない溝がありました」(長谷川) そこで、duAro2では上下方向に動く部分を、人間の腕のように折り畳まれるリンク構造に変更。これにより可動範囲はコンパクトに抑え、上下方向のストロークを長くすることが可能となりました。 「上下方向の可動範囲が55cmまで長くなったことで、箱詰め作業のほか、段差がある工程間のワークのハンドリングなど、duAro1では難しかった作業も可能になりました」(長谷川) duAro1も同時にアップデート。進化するduAroシリーズ 進化したのはduAro2だけではありません。duAro1もまた、お客さまの声に応えてパワーアップを続けています。duAroシリーズの進化をまとめると、次の通りです。 ポイント1 : duAro2は上下の可動範囲が55cmduAro2では上下の可動範囲が55cmまで広がりました。それにより、上下方向の動きに深さを必要とするダンボールへの箱詰めのような作業も可能に。 ポイント2 : duAro2は最大可搬質量が片腕3kg、両腕6kgduAro1では2kgの最大可搬質量が、duAro2では3kgに。両腕では4kgから6kgになりました。 ポイント3 : ビジョン機能が手軽に従来はカメラを付けて作業の対象を認識させるビジョン機能を使う際に、画像処理用のPCが別途必要でした。それが、新型のFコントローラを採用したことで、コントローラ単独で処理が可能に。カメラとソフトウェアを追加するだけで対応できるため、費用も抑えられます。 ポイント4 : コントローラの分離が可能にアームとコントローラの一体型構造がduAroの特徴でしたが、より自由な工場レイアウトを実現するため、アームとコントローラの分離型をオプションとして選べるようになりました。たとえば、アーム本体だけを装置の上に取り付けるなど、さまざまな現場のニーズに応えることができます。 今後も活躍の場を広げていくduAroシリーズ 2015年に発売を開始し、この度ニューモデルをリリースしたduAro。長谷川氏は現在までの手応えと今後の展望について次のように語ります。 「もともと、duAroシリーズは主に電気・電子業界を想定して開発したロボットでした。しかし、汎用性が高いduAroは人間が作業している場所なら、どこにでも導入できる可能性があります。 たとえば、当初はまったく想定していなかった食品業界からも、duAroへの反響をいただいています。食品業界の人手不足は深刻で、お弁当の工場であれば、24時間体制で1日に3回配送しなければならないため、3シフト分の人手が必要なのだそうです。 このような人手不足に悩む業界はまだまだあります。duAroを必要としている生産現場が、日本にはたくさんあるのです」(長谷川) そして次世代の「duAro3」の開発の方向性についても言及しました。 「動きを制限して、シンプルさを追求したことがduAroシリーズの大きな特徴ですが、duAro3では、手首を追加し、より複雑な作業をターゲットにする予定です。 しかし、動きの軸数を単純に増やすだけでは、『操作が簡単』という当初からのコンセプトと矛盾してしまいます。 より複雑な動きを可能にしつつ、使いやすさを追求する。この矛盾したテーマの両立は難しいですが、これを実現して初めて世に出せると考えています」(長谷川) 生産現場の声に応えながら進化を続けるduAroシリーズ。duAro3が登場すれば、さらに多くの人手不足を解消してくれることでしょう。日本、そして世界における「協働ロボット」の普及はまだまだこれからです。川崎重工が提供するduAroシリーズの今後の活躍にご期待ください。 ロボット導入を検討してみませんか?

ギズモードの新人はロボットです。人と一緒に働けるduAroをよろしくね01

ギズモードの新人はロボットです。人と一緒に働けるduAroをよろしくね

彼、仕事がめちゃくちゃ的確で早いんですけど! 年度末といったら忙しさMAXなシーズン。新ガジェットの発表が増えるから記事ネタはたくさんありますし、事務処理の書類もどんどん積もっていきます。 疲れがたまってくると、みるみるうちに集中力ダウン。いらぬトラブルのタネとなりがち。ホラまた「ああああっ…」と悲しげな空気をまとったため息が。どうしたの吉岡くん。なにかあった? 「アプリがフリーズしちゃって…原稿の保存を忘れてました…」 ああ。わかる。その切なさ、わかる。みなさんにもありませんか。論文やレポートをまとめているときほど、PCに不具合がでちゃうってことが。 「ほんと忙しすぎるんですよ…。猫の手も借りたい。1日だけでもいいから、スタッフ雇ってくれませんか?」 んー、人間じゃなくてもいい? ロボットになら声かけられるんだよね。2本の腕があって、いろんな作業をお願いできる川崎重工の「duAro(デュアロ)」ってヤツがいるんだよ。僕たちの真横で雑務をやってもらっても、危険がなくて大丈夫。ほぼ人間サイズだから、編集部に来てもらえるんだよね。 「ロボットのアシスタント…かっこいい! ぜひお願いします!」 編集部にロボットアシスタントがやってきた それから数日後の早朝。ギズモード編集部の入っているビルに、大きなトラックがやってきました。川崎重工のロボットビジネスセンターからduAroがやってきました。 自分では動けないので、人間の手を貸さないとダメ。ですが、このサイズ感って「立って半畳」ですよ。フットプリントはコピー機くらいじゃないですか。本当に、ひと1人ぶんの設置スペースで済むんだ、duAroって。 重さは成人男性3人ぶんくらい。だから普通のエレベーターでも運べちゃう。 ギズモード編集部にようこそduAro! さあ、今日は張り切って仕事してもらうからね! duAro、「command」+「S」キーを押してセーブして まずは何から頼もうか? そうですね、吉岡くんの悩みから解決してもらいましょうか。duAro、仕事をしている吉岡くんの前でスタンバッてて。 「ちょっとトイレにいってきます」 と席を離れた吉岡くん。きらーんとduAroの目が光った!(かのよう) 両手を駆使して、フェザーなタッチでキーボードの「command」+「S」キーをプッシュ! Let’s セーブ! これで万が一のトラブルがあっても、いままで書いてきた原稿がなくなることがなくなくなくなります。いい仕事っぷりだ! 機械の腕を活かしたパワフルタッチだけじゃなくて、ソフトにタッチできるduAro。繊細な動きもできるんだね。 そういえば、手先こそメカメカしいけど、腕は全体がウレタン樹脂でカバーされています。触るとちょっと柔らかみある。え? だれかにぶつかるとすぐ動きを止める衝突検知機能もあるから安全だって? duAro、とてもいい子じゃないですか。 とはいえ、だ。duAroをファイルのセーブ専用で働かせるのも、もったいない気はしますね。原稿執筆だったらオートセーブに対応しているアプリを使うか、1文字足し引きしただけでも保存するクラウドサービスを使えばいいという話もあるし。 OK。次は、もっとテクニカルな作業をまかせてみましょう。 duAro、3方向からガジェットの写真を撮って ギズモード編集部の仕事のうち、意外とヘビーなのガジェットの撮影なんですよね。白バックを使ってホリゾント作って陰がないようにライティングして…とまではいかないまでも、いろんな方向から写真を撮るには時間がかかります。 決まった方向からの撮影であれば、duAroでもデキるかな? デキるでしょう。じゃあ撮ってみようか! と声をかけてみたら。 でーきたー! duAroってばすごくオールマイティ。 片手でGoProを持って、片手でリモコン代わりのスマートフォンをタップ。スムースだしブレないし、なんて素晴らしいアシスタントなんだ。 真横&斜め45度の角度からパシャリ。しっかりと、正確に、こちらの狙い通りの画角でシューティングしてくれてます。できる子だなあ。 duAro、DJプレイで盛り上げて よく働いてくれるduAro。これは歓迎会をしないとなりませんね。え? DJプレイで歓迎会を盛り上げられるって? じゃあさっそく、ワザを見せてもらいましょう。 ドラムパッドでサウンドをゴージャスにして、プラッターをコスってきゅっきゅきゅー。上手いなー。 繊細なテクを見せつけてくれますよ。仕事もできるコだし、プライベートも充実している。なになに? 僕の手を直接動かして、覚えさせてくれればもっといろんなことができる、だって? しかも、一度覚えた動きは忘れないって? duAro君って実はリア充なのか。モテそうでニクい! 僕らと一緒の空間で、一緒に働けるロボットはもういたんだ duAroは産業用ロボットです。 今までの産業用ロボットは大きく、素早く、パワフルに作業をこなすことに重きが置かれています。特定のプロフェッショナルを突き詰めたからこそ、工場では特定の場所に固定され、安全確保のための柵で区切られたエリアでないと動かせないといった一面がありました。 でもduAroは違います。キャスターがついているので1人で押して運べますし、人間とほぼ同じ環境で運用できるフレンドリーな産業用ロボットなんです。必要なとき、必要な場所で、必要なだけ働いてもらえます。 アームの動きは持つ、押す、だけではありません。組み立ても、研磨や切断も、充填などもおまかせできちゃう。両手を駆使して持っているパーツの角度を変え、ほかのパーツを組み合わせるといったことも得意です。 水平多関節のアームの可動範囲は大きいし、スピーディかつ目的の位置でピタッと止まる正確さ。これだけの作業ができるロボットが、省スペースで設置できちゃうんですね しゃべってよし聴いてよし。これからのロボットというと、そんなコミュニケーション重視タイプが中心かな。そう思うときもありました。でも違うんですね。duAroのように、寡黙でも人の手伝いに専念してくれるロボットは、すでにいるんです。 ギズモード編集部では、duAroにちょっとしたお手伝いを頼みましたが、彼はもっと多くの、さまざまな作業を引き受けられます。そのストライクゾーンの広さがduAroの最大の個性。メンター次第で彼の活躍できる場は無限大。ちょっと、彼のこと、注目したくなりませんか? ということで、ありがとうduAro! また来てね! ※実際にduAroを動作させるには、タブレット端末 か専用リモコン(ティーチペンダント)によるシークエンスのプログラミング、または人間の手で直接アームを動かして動きをプログラミングする「ダイレクトティーチ」という作業が必要になります。ダイレクトティーチにより直感的にプログラミングを行えるのも、duAroの素晴らしい個性ですね。 Photo: 川崎重工、duAro、ギズモード編集部、武者良太 (武者良太) 記事掲載元: GIZMODO JAPAN 2018.03.22より転載 ロボット導入を検討してみませんか?

双腕スカラロボット「duAro」 人共存型ロボット開発の裏側01

双腕スカラロボット「duAro」 人共存型ロボット開発の裏側

川崎重工が開発した「duAro(デュアロ)」とは? 1969年に初の国産の産業用ロボット「川崎ユニメート2000型」を誕生させ、これまで多くの産業用ロボットを開発してきた川崎重工。そんな、日本における産業用ロボットのパイオニアである川崎重工が、2015年6月にリリースしたのが双腕のスカラロボット(水平方向にアームを動かすロボット)「duAro」です。「人共存型ロボット」と題し発売されたduAroは、顧客のニーズに向き合い、徹底的な使いやすさを追求した結果が詰まっています。 今回はそのduAro誕生秘話を、プロジェクトのスタート時から開発に携わっている川崎重工の長谷川省吾さんに伺いました。そこには50年以上に渡り、日本の産業用ロボット界を牽引してきた企業の並々ならぬ想いがありました。 開発プロセスの変化と企業のニーズ 「弊社はこれまで、培った技術や経験を元に、プロダクトアウト型での商品開発を進めてきましたが、慢性的な人材不足などの社会変化に伴って、徐々に実際の顧客ニーズにあったマーケットイン型の開発が社内でも推奨されるようになりました。それにより開発側にも変化が起こり、システム部隊が中心となる新たな商品開発がスタートしました」 と、当時の状況を語る長谷川さん。duAroの開発に至るまでの一つの要因として、開発プロセスの変化がもっとも大きなものだったようです。 「当時、duAroとは異なる、小型で低価格の商品を新規で開発していたのですが、良いアイデアが浮かばずなかなか上手く進んでいませんでした。duAro開発の直接のきっかけとなったのは、とある電子部品を製造しているメーカーから『カワサキのロボットを導入したい』とお声がけをいただいたことからです」 企業からお話をいただいて、まず行ったことは、実際の製造現場である工場の見学や、徹底的なヒアリングだったと話す長谷川さん。その上で、「企業の要望に応えるためには、どんなロボットを導入すべきか」をとことん検討したそうです。しかし、従来の産業用ロボットをそのまま導入するには多くの課題があったといいます。 従来の産業用ロボットの導入を阻む課題 「お話をいただいた企業は、3ヶ月ほどで新しい商品がリリースされるような製品を扱っていらっしゃいました。実は従来の汎用型産業用ロボットは、自動車のような長期のプロダクトサイクルをもち、大量かつ大型の製造物の生産には向いていますが、短期でプロダクトが変化する製品には向かないのです」 その理由を、長谷川さんはこう続けます。 「産業用ロボットの導入~作業実施までは通常半年程度の期間がかかります。ロボット自体の設置や安全性を確保する柵の取り付けなどのため、製造ラインに手を加える必要もでてきます。それらは、現場の業務フローの変更を意味していますので、ロボット本体だけでなく実施までのプロセスに至る整備や調整にかなりのコストと時間がかかります。例えば、ロボット本体を1とすると、周辺のインテグレーション、つまりロボットを稼働させるまでの整備や調整に3くらいのコストがかかる計算になります。そのため、短いサイクルで製造する内容がどんどん変わっていくような製品では、それに合わせて都度ロボットの動作環境を組み替えていく必要があるため、コストや導入までのスピード感が見合わず導入自体が難しくなるのです」 では、従来の産業用ロボットが宿命的に抱える課題が残るなか、川崎重工のロボット「duAro」はその問題をどのように解決していったのでしょうか。 「duAro」が目指した人との共存 そのひとつの答えが、duAro最大の特徴である「人共存」だと長谷川さんは語ります。 「duAro開発の際に、『人共存型のロボット』というコンセプトを掲げました。ロボットを導入していない現場では、これまで通り人が作業をしており、それはどんな製造現場でも同様です。しかし、duAro自身が作業者と同じスペース(人一人分)で入れ替わって作業をすることができれば、業務フローや製造ラインに手を加える必要もなく設置・導入することが可能となります。人とロボットが共存することで、高いハードルとなっていた導入コストと導入にかかる時間という壁をクリアしました」 人共存型のロボットを実現するためには、スカラベースや双腕というロボットの構造自体にも秘密があったそうです。 「作業現場を観察した際にわかったことは、ほとんどの作業が平面作業の組み合わせであるということでした。それを踏まえ、立体作業を無くし水平方向のシンプルな動きのみが可能なスカラベースのロボットにすることを決定しました。duAroは、1本の軸から2本の腕が出ている双腕型のロボットですが、それは、人が2本の腕を用いて行う作業をロボットに置き換えるため、ロボットにも2本の腕が必要だからです。さらに、1本の軸から腕が出ていることにより、双方がぶつかるなどの干渉が起きにくく、従来のスカラロボットでは難しい協調動作(2台以上のロボットが、お互いの位置関係などを把握し、協力して1つの動作を行うこと)もduAroのみで可能になります。人と同じ場所で作業をする上で、安心・安全面を確保するための配慮ももちろん施していて、腕の部分をウレタン素材のクッションで覆い、もし隣の作業者とぶつかってもケガをしないような設計にしました」 現場担当者が直接操作可能なアプリケーションを開発 安全面のほか、使いやすさという点でも工夫を加えていると長谷川さんはいいます。 「短期のプロダクトサイクルの製品の場合、ロボットに作業を教えるティーチングを頻繁に行う必要が出てきます。従来は小さな変更でも専門技術者が必要でしたが、duAroは誰でも簡単にロボットに作業を教えられるよう、アプリケーションも同時開発し、従来のように専門の知識が必要なティーチペンダント(ティーチングをする端末)だけではなく、タブレットを使用したティーチングも可能になりました。また、直接ティーチングできる機能(作業者がロボットのアームなどを直接動かし、その動作をロボットに記憶させる方法)を備えています。実はスカラベースで軸数が少ない(水平方向の動作のみ)という点も、それを助ける要因になっています」 「その他にも、より簡単に導入できるような工夫をしています。duAroはコントローラ一体型(通常、産業用ロボットにはコントローラというロボット本体を制御する装置が別に必要)かつ、キャスター付きなので平面な場所であれば人間が一人で移動させることが可能です」 このように、duAroは人共存型のロボットを目指すことで、これまでの産業用ロボットの課題を解決し、顧客ニーズに応える商品となったのです。 「duAro」の未来と川崎重工の想い 「現在、duAroは様々な企業に導入しやすくするため、さらなる開発を進めております。一つはアームのバリエーションの増加です。これにより平面だけではない作業も可能になり、より多様な分野に対応することができます。二つ目は音声認識などの新機能です。声紋認証で音声操作の機能を備え、アームの始動や停止を音声で行えるようになります。今後も顧客のニーズに合わせた製品開発に取り組んでいきます」 これまで以上に、もっと多くの産業の現場で人とロボットが共に働ける未来を語ってくれた長谷川さん。そんな未来を後押しするかのように、川崎重工は2017年11月のプレスリリースで川崎重工とABBグループが協働ロボット分野における協業を発表しました。スイスの老舗ロボットメーカーであるABBグループとの協業に至った経緯についても、長谷川さんはこう語ってくれました。 「今後、ロボットが導入・活躍する現場が拡大することで、さらなる安全性や操作性の向上が必要になります。これからは、顧客が求める技術的ハードルの高い部分に対しては、各社が別々に取り組んでいくのではなく、業界が協力しその標準を作ることが大切です。この協業をきっかけに、より使いやすく、より普及しやすいロボットを作る取り組みが推進できれば良いと思っています。今後はABBグループだけでなく、業界全体を巻き込み、顧客にとって安全で操作性の高いロボットの開発に取り組み、それを普及させることで未来の日本を支える労働力の確保に貢献したいと考えています」 ロボット導入を検討してみませんか?