株式会社バイナス(愛知県稲沢市・渡辺 亙代表取締役社長)は、CDS株式会社(愛知県岡崎市・東証スタンダード)のグループ企業として、FAロボットシステム事業の“ものづくり事業”と、工業教育・職業訓練教材事業およびロボット教育センターの“人づくり事業”の双方向から、工業技術分野のソリューションを展開しています。
FAロボットシステム事業では、得意とするセンシング技術を武器に、ビジョンセンサーや力覚センサーといった先進技術を駆使し、自動車、電機、電子分野での自動化の進んでいない手組み工程の自動化や、食品や医薬品の自動化など幅広い分野へ自動化の実績を作ってまいりました。
その1つである食品製造工程では、“柔らかい” “形がまちまち”など難しいワークを相手に精力的に取り組み、そのままの形状で扱える自動化システムの実績を積み重ねてきました。そんなバイナスが現在開発を進めているのが、Successorを使った「食材かき混ぜシステム」です。
導入背景/課題:
<優れたセンシング技術で独自性を確立>
デリケートな食品関連(例:焼きたてのパンやポテトサラダ、クッキーなど)のワークを扱う豊富なノウハウを持つバイナスは、給食センターの自動化にも携わることになりました。「給食センターの現場で目にしたのが、大量の湯気の中、大きな鍋に入った食材を調理員の方が懸命に混ぜている姿でした。とりわけカレーのように粘度が高いものとなると、大変な力仕事なんですね」(株式会社バイナス 取締役営業部長 下間 篤氏) トルクを使って一定の速度でかくはん作業を行うロボットや専用機はすでに存在するものの、煮崩れしやすい食材が砕けたり、かき混ぜ具合に偏りが出てしまうことも。「人の目で見ながら、リモートでかき混ぜることができれば食材も潰れない。そう考えた時に出会ったのがカワサキのSuccessorでした」 こうして、料理人の微妙な“手さばき”を遠隔で再現する「食材かき混ぜシステム」の開発がスタートしました。
導入効果/ソリューション:
<かき混ぜのような過酷な調理作業の労力をロボットによる遠隔操作で軽減>
川崎重工が開発した「Successor」は、コミュニケーターと呼ばれるコントロールユニットを使い、離れた場所にある垂直多関節ロボットを遠隔操縦できるロボットシステムです。川崎重工では、用途に合わせて複数のコミュニケーターを開発していますが、今回バイナスが着目したのが「Plesio(プレシオ)」と呼ばれる棒状のタイプ。給食センターでのかき混ぜ工程に近い要領で、遠隔協調操作をすることが可能です。このSuccessorとバイナスの技術が融合し、食づくりの現場を助ける新しいソリューション「DRR(Dual Remote Robot)アプリケーション」が生まれました。
DRRアプリケーションを使った「食材かき混ぜシステム」の実験用設備には、①先端にかき混ぜ用のしゃもじをアタッチメントした独自のハンドを装着する垂直多関節ロボット「RS010N」
②コミュニケーター 「Plesio」を装備したSuccessorユニット
③カメラ
④モニター
⑤専用インターフェースを採用したタッチパネル
⑥約30人分の食材を加熱調理できるガス回転釜(既製品)を設置。
作業者はカメラが映し出す釜内の映像を見ながら、手元のコミュニケーターを使ってかくはん作業をするので、繊細な食材を潰さないよう、効率よくかき混ぜ調理を行うことができるのです。また、パラメーター次第でコミュニケーターの操作感や重みを変更できるため、軽い力で粘度の高い食材をかき混ぜることも可能です。
Successorを使った「食材かき混ぜシステム」は、オペレーターは自分の目で鍋の状態を確認しながら操作ができるので、崩れやすい食材などでも満遍なくかくはんするなど、良質で効率に優れた作業が可能に。また、力覚センサーによってロボットにかかる負荷の度合いをオペレーターの手で感じることができ、より繊細な作業にも対応することができます。
熱気の中で大容量の食材を調理する過酷な現場を救うソリューションとして期待されています。
今後の展望や計画
<雇用問題の改善にも繋がる遠隔協調システム>
独自開発のアプリケーションとSuccessorを組み合わせ、今後は機器の洗浄や重量物の運搬といった異なるタイプの遠隔協調システムも開発していくという。
「現在開発が進められている『食材かき混ぜシステム』は、今年の秋頃にはコンビニフードベンダーやセントラルキッチン施設での実証実験をスタートする予定です。来年には受注を開始し、導入を進めていきたいと考えています」(下間氏)。しかし、そこで“完成”というわけではないようです。DRRアプリケーションはかくはん作業だけでなく、機器の洗浄や重量物の運搬などにも応用可能で、様々な現場を助けるポテンシャルを持っています。「市場調査をしながら今後も新しいソリューションを開発していきます」(下間氏)。
DRRアプリケーションには拡張性がある、と更なる展開を期待していると下間氏は、機械学習の活用も視野に入れています。使用データを蓄積し、作業者の手さばき=ロボットの動きをパターン化すれば、将来的には「カレー」「シチュー」「肉じゃが」といった料理別に、ロボットが完全自動で調理することができるようになる−−そんな未来図も描いています。「例えば5G通信が普及すれば、働く場所を選ばずに作業することができます。遠く離れた快適なオフィスで座ったまま作業したり、夜間には時差のある海外から操作する、といったことも可能となるかもしれません」。それが実現すれば、働く人の幅はさらに広がり、人手不足の解消、あるいは雇用機会の不足する地域での人材活用にも繋がるはずです。
ロボットを使う人づくり、そしてロボットを駆使するモノづくり。その両輪をフル回転させて前進を続けるバイナスは、どんな企業になっていくのでしょうか。「我々は、電子部品、航空機、工作機械、食品、農業、医薬品と、業界を一切問わず様々な自動化システムを取り扱ってきました。ですから、引き出しには色々なアイデアや構想がいっぱい溜まっています。『絶対自動化出来ないと思っていたことでも、バイナスに頼めばやってくれる』。そんな風に思っていただける存在でありたいですね」
ー 導入企業情報
会社名
株式会社バイナス
代表者
代表取締役社長 渡辺 亙
設立
2006年1月 設立
2008年10月 CDS株式会社のグループ会社となる
資本金
5,000万円(出資:CDS(株) 100%)
事業内容
ロボット/FAシステム、搬送装置など各種生産設備・機械装置の製造。各種試験装置、実験装置の開発。PLC、サーボ駆動系、パソコンなど制御ソフトウェアの開発。FA関連教育システムの製造・販売。各種工業教育システムの製造・販売。教育支援サービスの提供。売
社員数
64人
事業所
愛知県稲沢市平和町下三宅菱池917番地2
ウェブサイト https://bynas.com/
- 導入ロボット
モデル名:
RS010N=「より速く、広く、正確に、そしてコンパクトに」を目指した小型垂直多関節ロボット
特長
コンパクトなデザイン、軽量設計、広範なワーキングレンジ
可搬重量 : 10kg
軸数 : 6軸
繰り返し精度:±0.05mm