コンテナ荷降ろし+パレタイズを一括自動化!上組が語る川崎重工のロボットを活用した物流現場改革

上組とVambo

株式会社 上組は、神戸港開港とともに神戸に産声を上げて以来、日本の港湾物流を支えてきた総合物流企業です。港での荷役から始まり、倉庫保管、陸上輸送、重量貨物運搬、さらには海外現地物流まで、幅広いサービスを展開。現在では「上組デザイン物流」を掲げ、顧客ごとに最適な物流ソリューションを提供しています。

物流現場では、作業効率や安全性の向上、品質の安定化を目指し、より高度な自動化が求められていました。こうした中、上組は川崎重工製のパレタイズロボットとデバンニングロボット「Vambo」を導入し、コンテナ荷降ろしからパレタイズまでを一括で自動化する仕組みを実現しました。

今回は、この革新的な取り組みについて、神戸支店 副支店長 松田氏と倉庫部 統括所長 中村氏に詳しくお話を伺いました。

神戸の港で港湾物流を支えてきた上組
神戸の港で港湾物流を支えてきた上組

神戸のポートアイランドで進む自動化検討

上組

今回のロボットによる自動化の舞台は、上組が複数拠点を展開する中で、港湾事業として輸入貨物の取り扱いを担う神戸のポートアイランドです。ここでは、海外から届いたコンテナを受け入れ、コンテナ内の貨物の荷降ろしから仕分け、保管までの一連の工程を効率的に行うことが求められています。

自動化の対象となった一連の作業内容
  • コンテナ搬入:トラックで運ばれたコンテナをヤードで開封
  • 荷降ろし作業:作業員がコンテナ内で約25kgの段ボールを手作業で降ろす
  • パレタイズ作業:降ろした荷物をパレットに積み付け、ラップ巻きで固定
  • 保管・出荷準備:フォークリフトで倉庫内に移動し、保管または出荷へ

これらの工程は、精度とスピードが求められる重要な作業であり、作業員に対してもより快適で安全な環境を実現するための改善策が検討されており、当時の状況について神戸支店 副支店長 松田氏はこう語ります:

「現場の作業をより効率的で安全なものにするために、ロボットを含めた新しい選択肢を積極的に検討していいました。そういった中で川崎重工製のパレタイズロボットとコンテナから荷降ろしを行うデバンニングロボット「Vambo」と出会いました」

神戸支店 副支店長 松田氏

なぜ川崎重工だったのか?

世界でも稀有なデバンニングロボット“Vambo”
世界でも稀有なデバンニングロボット“Vambo”

今回のプロジェクトで、上組が川崎重工製のロボットを選んだ理由は、単なる機械性能だけではありません。決め手となったのは、長年の実績に裏打ちされた信頼性と、物流現場の多様なニーズに応えられる柔軟なカスタマイズ性でした。

松田氏はこう語ります。

「やはり川崎重工さんの長年の実績が一番当社としても期待していました。高度な技術と柔軟なカスタマイズにより、多様な作業に対応できる点も大きな魅力でした。さらに、高速・高精度な動作性能、安全性や操作性の高さ、そして導入後のサポート体制が充実していることから、長期的な運用に適していると判断しました。」

“Vambo”がコンテナの荷物を上から下まで全てデバンニングする様子 
“Vambo”がコンテナの荷物を上から下まで全てデバンニングする様子 

川崎重工の強みは、デバンニングからパレタイズまでを一括で自動化するソリューションを提案できることです。単なるロボット単体の提供ではなく、物流現場全体の工程を見据えたシステム構築力が、今回のプロジェクトにおいて大きな価値を発揮しました。

この「一気通貫の自動化提案」は、現場の負担軽減だけでなく、作業効率や品質の安定化、さらには将来的な完全自動化への道筋を示すものとなっています。

ロボットで自動化するとなった際の現場の反応は

検討を重ねた末、神戸ポートアイランド倉庫での自動化プロジェクトが正式に動き出しました。今回の取り組みは、コンテナ荷降ろし(デバンニング)からパレタイズまでを一括で自動化する仕組みを導入するという、物流現場にとって大きな挑戦です。

デバンニングした荷物を次にパレタイジングロボット”CPシリーズ”がパレタイズする様子
デバンニングした荷物を次にパレタイジングロボット”CPシリーズ”がパレタイズする様子

松田氏は、その瞬間をこう振り返ります:

「最初にロボットを見たときは、そのサイズに驚きました。『こんな大きな機械が倉庫で本当に動くのか?』という不安もありました。倉庫の現場で、コンテナ荷降ろしからパレタイズまでをロボットが一括で担うというのは、これまでにない取り組みでしたから。」

導入後の作業現場の変化 ~単なる省人化ではない、安全性・効率・品質の三位一体の改善を目指した挑戦~

上組 倉庫

導入後、現場はどう変わったのでしょうか。日々のオペレーションを統括する倉庫部 統括所長 中村氏はこのように語ります。

「従来は、コンテナ内で荷物を上から下へ降ろす作業は比較的スムーズでしたが、下から上へ荷物を持ち上げる作業は腰への負担が大きく、作業者にとって厳しいものでした。それがロボットで自動化されたことで、効率性と安全性の両方が向上したのを実感しています。特に夏場の高温環境での作業がなくなったことは、熱中症リスクが解消され現場からも非常に好評です。」

上組 倉庫部 統括所長 中村氏
倉庫部 統括所長 中村氏

従来は4名で行っていた作業のうち、最も負担が大きい工程をロボットが担うことで、作業者は軽作業に集中できるようになったとのことで、現場スタッフからも、

「重い荷物の取り扱いが楽になった」

「作業スピードが上がり、全体の流れがスムーズになった」

といったポジティブな声が多く寄せられているとの声をいただけました。

導入初期には操作習熟に時間がかかるなどの課題もありましたが、総じて評価は非常に高いとのことです。物流現場でロボットを導入する理由として、一般的には「省人化」や「費用対効果」が挙げられることが多いですが、今回のプロジェクトで上組が重視したのは作業者の安全を確保することで、それを実現することができたのです。

今後の展望:さらなる改善と完全自動化への期待

今回の取り組みは、コンテナ荷降ろしからパレタイズまでを自動化するという、物流現場における大きな一歩となりました。しかし、現場ではすでに次のステージを見据えています。

上組 倉庫 従業員

中村氏はこう語ります。

「今後はいろんな作業をする中で、川崎重工さんとデータ共有をしながら改善を進め、より多くの工程でロボットを活用できるようになればと期待しています。理想を言えば、コンテナが入ってパレタイズされ、倉庫に保管されるまでの一連作業が完全自動化されることです。」

さらに、ロボットの進化にも期待が寄せられています。

「もっとコンパクトになって、スピードも速くなれば、作業効率はさらに向上します。安全性と効率性を両立しながら、より良い現場づくりを目指していきたいですね。」

こうした声からも分かるように、今回の導入はゴールではなく、完全自動化とさらなる効率化への第一歩。上組と川崎重工の取り組みは、物流現場の未来を切り拓く挑戦として続いていきます。

今回インタビューさせて頂いた松田氏(左)と中村氏(右)

今回インタビューさせて頂いた松田氏(左)と中村氏(右)

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