カード印刷の設置・回収を協働ロボットで自動化

Kenbisha イメージ

カード印刷のパイオニア。24時間稼働を実現し、生産性の向上を目指す

ポイントカードにメンバーズカード、社員証や診察券など、用途はさまざまですが、みなさんの財布の中にも複数のプラスチックカードが入っているのではないでしょうか? そのプラスチックカードに特化した印刷を手がけているのが、株式会社研美社です。

研美社では、顔写真や氏名が入るIDカード専門の「IDmart」をはじめ、FelicaやMifareなどのICカードに特化した「iCカード.com」、データ入稿やデザイン作成がオンラインで完結できる「IDカードセルフ」など、用途に合わせたサイトを運営。「お客様にご不安を抱かせず、スムーズな対応で安心してご注文をいただける」をコンセプトにしたサービスの提供で取引実績は12,000社を超え、その8割がリピーターとなっています。

そして、お客様対応の約束と心構えとして掲げている「迅速」「丁寧」「安心」「安全」「感謝」の5つをより高いレベルに引き上げるために、川崎重工業のロボットを導入しました。

川崎重工 duAro カード印刷

時代を先読みし、いち早くネット通販を導入

株式会社研美 中田社長

株式会社研美社は、中田社長の祖父が昭和30年ごろに研美社印刷所として創業しました。その後、父親が祖父の会社から独立し、株式会社研美社を設立。中田社長は大学を卒業後別の会社に就職していましたが、30歳を機に研美社に入社し、現在は社長として会社を引き継いでいます。

入社当初は印刷機を所有しておらず、営業のみを行い、印刷は外注するスタイルだったそうです。インターネットの台頭など紙の需要が減少し、売上も徐々に落ち込んでいたことから、立て直しをかけて中田社長が目をつけたのが、ネット販売でした。

当時はネット販売が世に出始めたころで、中田社長も世間に先駆けていち早くホームページを作成し、ネット販売を開始。すると全国からの受注が増え、小型ながら印刷機も導入し、徐々に売上が回復したそうです。

カード印刷に特化した印刷会社へ舵を切る

カード印刷ディスプレイ

しかし受注が増えた反面、小型の印刷機での作業が追いつかず、特に年賀状の時期になると徹夜が続く毎日。労力の割には利益率が低いことからも、より効率的に利益を上げられるものを模索したなかで出会ったのが、プラスチックカードでした。

当時は会員カードなども紙が主流だったため、プラスチックカードの印刷を手がける業者も多くありませんでした。また、いち早くネット販売を取り入れたことから検索順位が高いことも追い風となり受注が増大し、プラスチックカードに特化した印刷会社へと舵を切っていったそうです。

より効率的な業務の実現に向け、自動化を模索

研美社が手がけるプラスチックカードは小ロットにも対応しており、なかには1枚だけという受注も少なくないそうです。1枚1枚異なった絵柄を印刷することもあるため、印刷機へのカードのセットから終了後のカードの回収まですべて手作業。一度に印刷できるのは36枚で、片面印刷だと約15分、両面印刷となると倍の時間が必要となり、その時間はスタッフが付きっきり。

そこで、お客さまにももっとスピーディーに提供するためにより効率よく作業できないかと、自動化を検討しました。しかし、自動化といってもどこに相談すればいいのかわからないため、中田社長は前職で得意先であったマシンオート株式会社に相談に出向きました。

アーム1本から2本へ。効率化と小型化を両立

川崎重工 duAro

マシンオート株式会社は、奈良県に所在地を置くカワサキロボットのシステムパートナーです。ロボットやAI、IoTを使ってさまざまな業務の効率化に寄与している企業で、中田社長が相談に行った際にロボットの導入を提案されたそうです。話は進み1号機が導入されましたが、実は川崎重工のロボットではなく他者製品のものでした。

1号機ロボットの導入によりスタッフの手間は減り、就業時間外での稼働も実現できましたが、アームが1本だったため、1回の作業時間に大きな変化はありませんでした。そこで中田社長はより高い効率性を求め、マシンオートに再び相談したところ、川崎重工の双腕ロボットの話が持ち上がりました。

川崎重工の双腕ロボットはアームが2本あるため、印刷が終了したあとに片方のアームでカードを回収しながら、もう片方のアームで新たなカードをセットすることが可能で、時間が大幅に短縮できることから導入が決まりました。さらに、アームが2本に増えるにも関わらず、ロボット自体は1号機に比べてコンパクトになることも、導入の決め手になったそうです。

スタッフのあいた時間を、クリエイティブに費やす

スタッフミーティング

しかし、導入直後は作業不良が多く発生したそうです。スタッフたちが不慣れなこともありますが、扱う製品がプラスチックで、ちょっとした厚みの違いや反り、静電気などがかなり影響しました。「マシンオート株式会社の担当者様に調整いただいたおかげで、今ではスピーディに稼働しています」と中田社長が話すように、現在は安定していて、作業効率は約1.6倍に上がったそうです。

また、双腕のアームに加えて、ICチップに情報をエンコードする機器を備えた3号機をすでに導入しており、作業効率がさらに向上しています。スタッフがつきっきりになる必要がないため、手があいた時間をクリエイティブな仕事に注力できるようになり、新しいアイデアが生まれる土壌も築かれつつあります。2026年の4月を目標に4号機の導入も視野に入れており、さらなる飛躍のためにロボットの導入が必要不可欠となっています。

ロボットを進化させ、印刷業界の底上げに繋げる

川崎重工 duAro

ロボットの導入はまだまだ一般的でないことからも、中田社長のもとには「ロボットを見学させて欲しい」と多くの連絡が入るようです。見学を快く受け入れる一方で、「川崎重工さんからもどんどん導入事例を印刷業界に共有してもらいたい」と中田社長。

それにより多くの印刷会社がロボットを導入し、その意見をまたフィードバックしてもらう。それを繰り返すことでロボットがより進化し、さらにはパートさんでも簡単に操作できるインターフェイスの整備なども進んでいけば、よりよい生産環境が生まれ、業界全体の底上げに繋がっていくと考えています。

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