【Robust Humanoid Platform】7代目Kaleidoはどこが違うのか?

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半世紀以上にわたり、産業用ロボットを作り続けてきた川崎重工の技術を結集したヒューマノイドロボット「Kaleido」。2015年に開発を開始して、2017年に初代を発表。以降、バージョンアップを続け、7代目となるRHP(Robust Humanoid Platform)7がiREX(2022国際ロボット展)で披露されます。最新のKaleidoの見どころを開発責任者である掃部 雅幸氏(工学博士)に聞きました。

Kaleidoとは

「Kaleido」は、川崎重工が研究・開発を行うヒューマノイドロボット(人型ロボット)。 産業用ロボット分野で50年以上の歴史を持つ川崎重工業の技術を活かした高い耐久性を備えており、大人とほぼ同じ体格を持ちながらも、“転んでも壊れない”堅牢な構造が特徴。将来的な実用化を目指している。身長180cm、体重は80kg。

7代目Kaleidoはどこが違うのか?

ー 7代目Kaleidoのバージョンアップのポイントについて教えてください。

これまでのバージョンでは、まずKaleidoで2足歩行を実現することを目指していました。それには成功したものの、一般の方がヒューマノイドロボットに要求するレベルは人と同じように自然に動作すること。旧来のKaleidoでは、まだそのレベルには至っていませんでした。

私たちが今回のKaleidoのアップデートで追求してきたのは、「人間のように歩く」「人間のように動作する」という部分です。今回、iREXでは、RHP7の自然で速い動きに注目していただきたいです。

ー 人間のように歩く、動作するというのは、具体的にどういうことでしょうか?

2足歩行ロボットは工学の理論上、膝を曲げながらしか歩くことができません。でも、人間は膝を伸ばして簡単に歩くことができますよね?また、人間は踵から着地して、つま先を蹴って歩きます。これも当たり前のようですが、剛体でできたロボットの足で行うのはなかなか難しい動作です。

こういった制約の中で、私たちは人間の平均的な歩行速度である時速4kmでKaleidoを歩行させることに成功しました。RHP7の歩行を見ていただければ、これまでよりもスムーズに歩行していることを実感いただけるはずです。

この速く歩くということを実現している背景に「動的動作対応」という技術があります。対義である「静的動作対応」は2本足で立っているときにも必ず重心が体の中心にあり、歩くときもゆっくりバランスをとりながらになります。一方で、「動的動作対応」では、重心が自分を支えている足からずれるような動きを積極的に行うことができる。不安定な状態を制御で安定化させて、より人間に近い動きを実現するのです。

失敗をするためのロバスト性

ー 開発にあたってのポイントを教えてください。

まず、1つには先ほどお話した不安定な状態を安定化させるための制御技術。不安定な状態で動作をするためには、まずどのような不安定化が起こるかを予測しなければならず、その不安定を素早く制御して安定化させる作業が必要です。その制御に要求される技術が格段に上がりました。

また、これらの開発は失敗を繰り返しながらの地道な作業になります。開発のプロセスで何度もロボットが倒れるのに対して、壊れない機体がとても重要です。もともとRHPはロバストヒューマノイドプラットフォーム(Robust Humanoid Platform)の略称。ロバストとは「屈強」「堅牢」などの意を表します。元来壊れにくい構造ではあるのですが、それでも積極的にバランスを崩すような実験を繰り返せば、機体にダメージを負うこともあります。それゆえ、さらなる壊れにくい機体への改良もまた必然でした。

ヒューマノイド技術を向上させるオープンプラットフォームへ

ー より人間の動きに近づいたKaleidoですが、iREXにおける展示の見どころを教えてください。

私たちが最終的に目指すのはヒューマノイドロボットの社会実装です。そのため、今回はKaleidoに労働をさせるとどうなるのか。実際の危険作業を想定した展示を行っています。

1つは建設現場を想定した高所作業です。現状、高所作業は人によって行われています。命綱をつけてはいても、やはり危険を伴う作業です。そういった作業はロボットにやってもらいたいものですよね。今回の展示ではKaleidoを吊り上げて、ふらふらと揺れている状況で、作業を行います。

もう1つの展示ではKaleidoが平均台に上ってバランスを取りながら歩きます。そこでぴょんと飛んだりと、先ほど申し上げた「動的動作対応」をわかりやすくお伝えします。

今後、Kaleidoは川崎重工だけでなく他の多くの大学や企業と連携しながら開発・社会実装を進めていきたいと考えています。プラットフォームとしてヒューマノイドロボットの技術を向上していける仲間であれば、国内外問いません。研究者の皆さんには、是非「動的動作対応」でKaleidoの持つ可能性を感じていただければと思います。

ロボットのオープンイノベーション空間
YouComeLab

ロボット開発の課題

労働人口減少、コロナ禍など、ロボットの社会実装が求められています。一方で、ロボット開発には、費用、付帯設備、トラブルサポート、修正など、さまざまな壁があります。ロボットメーカーではない企業の開発は難しく、ロボットメーカーへ試作を依頼しても改良のためのデータが得られないなどの課題がありました。

YouComeLab ーカワサキロボットで、気軽に、手軽に、新技術・新商品開発ができる空間

川崎重工は、AI・機械学習、先進センサ・先進制御、先進素材など、さまざまな専門領域を持つ機関とのオープンイノベーションの場として、YouComeLabを設立します。

YouComeLabには、ヒューマノイドロボットのKaleidoのほか、遠隔協調システムのSuccessorなど、川崎重工のロボットを設置予定。これらのロボットを利用して、企業や大学などの各機関が自ら開発を試みることができます。

YouComeLabの特長

ロボット・設備の利用:無料
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高度なシステム:川崎重工と共同トライ

明石工場内では2021年4月から稼働中、東京(羽田)で22年4月から開設予定、名古屋(長久手)にも22年度中に設置する予定です。そして今後はシリコンバレー、北京、パリなどの海外拠点も設置したいと思ってます。川崎重工は人間とロボットが共存・共栄する社会の実現のため、さまざまなパートナーとの共創を推進していきます。

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