私たちの暮らしを支えるプリント基板、その“装置への出し入れ”はまだ人手に頼っていないか

現代の生活は、あらゆるところで電子機器に支えられています。スマートフォンやタブレットはもちろん、エアコンや冷蔵庫といった家電、コピー機やPCなどのOA機器、そして自動車に至るまで――今や製品は「電子部品の集合体」と言っても過言ではありません。
その心臓部がプリント基板であり、基板の安定供給なくして製造も物流も日々の暮らしも成り立ちません。
一方で、基板製造・関連工程の多くは自動化が進む一方、装置に基板を投入し、装置で処理した後に取出し、次工程へ搬送する――この“装置への基板の出し入れ”の周辺作業は、現場条件や装置ごとの特性、基板そのものの多品種化により、いまなお人手が残りやすい領域でもあります。
こうした課題に対し、基板製造のリーディングカンパニーである株式会社メイコーは、川崎重工のRSシリーズを活用した「基板投入セル」を導入し、投入・取出し自動化のさらなる推進に踏み出しました。
基板製造の現場に“順次ロボット化”を──メイコーが選んだのはRSシリーズ

基板メーカーとして1974年に創業し、神奈川県に本社を構えるメイコー。国内外に生産拠点を展開するエレクトロニクス総合企業として、設計・製造から付随する関連業務まで幅広い事業を展開しています。
今回、導入の背景を語るのは、産業システム機器部 FAシステムグループ課長の谷次氏です。

「弊社では基板製造の投入や受取工程で、人からロボットへの切り替えを順次進めていまして、主にRSロボットを使用しています。基板のラックはLラックや平ラック、カゴなど、様々な形状で積載していますので、柔軟な角度や動作が可能な6軸ロボットが向いています」
製造工程で扱う基板は、サイズも重量も多様です。さらに、現場では運用上の都合から複数形状のラックが混在しやすく、装置側も工程・メーカーにより仕様が異なります。こうした“ばらつき”に対して、メイコーが重視したのが「汎用性と扱いやすさ」でした。
「基板はサイズや重量も様々なので、小型から大型までラインナップの揃っているモデルが使いやすいですね。中でもこのRSは腕周りが結構シュッとしているので、ケーブルが引っ掛かりにくくて使いやすいと思います」
谷次氏が述べた川崎重工の小・中型汎用ロボット「RSシリーズ」は、豊富なラインナップに加え、アーム内部に配線を通すことができる「中空手首構造」を採用している点が特長です。
これによりケーブルの取り回しが容易となり、装置周辺が狭くても干渉リスクを抑えた、安定した運用を実現しています。
今回の設備ではRS007Lを使用した設備になりますが、川崎重工とメイコーは、お客様の装置仕様や基板サイズに応じて、RS007L、RS013N、RS025S、RS025Nなど幅広いラインナップから最適な機種をご提案可能です。

“基板”と“合紙”が混在するLラック──現場の当たり前が自動化の壁になる
導入された基板投入セルが対象とする運用の一つが、Lラックにセットされた基板を加工機へ自動投入する工程です。
ここで難しいのは、Lラックには基板だけでなく、保護や仕切りのための合紙が混在している点にあります。見た目が似た対象物を「取り違えず」「止めず」「安定して」流すことが、装置の稼働率を左右します。
産業システム機器部 FAシステムグループの吉松氏は、今回のシステムの狙いをこう説明します。

「人が行っていた作業をロボットに置換えて、自動で『投入』『搬送』『受取』などを行うようにしてます。Lラックには『基板』と『合紙』の2種類がありまして、画像センサーで判別して加工機に基板を投入します」
現場では、作業者が手でLラックへ基板を置くため、どうしても位置ズレが発生します。
人なら感覚的に“基板の位置を合わせて”投入できますが、ロボットにはそのままでは通用しません。そこで本セルでは、カメラによる位置補正(アライメント補正)を取り入れ、ズレを吸収しながら加工機へ確実に投入できる構成としました。
「アライメントに関しては作業者が基板をLラックに手で置くのでズレが発生します。そのズレに対してカメラを用いて補正して加工機などに投入できるのは、とても良い点だと思います」

製品に“触れない”外周吸着と基板サイズに応じた自動可変ハンド、そして表裏対応を可能にする反転機構
基板は精密な製品であるため、表面品質への影響をできる限り抑える必要があります。
そこで本セルでは、ロボットハンドが基板の縁(外周)を吸着する方式を採用しています。基板の有効領域に直接触れにくい構造とすることで、取り扱い品質の安定化に寄与しています。
「ロボットハンドが基板の縁を吸着することで、製品面に直接触れない点も、この装置の大きな特長です」と吉次氏は語ります。
また、基板サイズの違いに対応するため、ハンドが自動で追従する可変機構を採用しています。これにより、品種切替時の段取り作業を削減し、多品種生産においても安定した運用が自動可変ハンドによって可能となっています。

基板製造では表面・裏面の両面を扱う工程も多く、片面のみの対応では段取りや搬送に手間がかかるという課題があります。
本セルでは、装置内で基板を反転する機構を備えることで、表裏どちらの加工にも対応可能としています。これにより、工程間の段取り替えを削減し、作業効率の向上に貢献しています。
「片面のみの対応では、どうしても二度手間が発生します。本装置では装置内で基板を反転させることで、表面・裏面のどちらにも対応できる点が特長です」と吉次氏は説明します。

多品種でも“段取り替え最小”へ──作業者は台車をセットするだけ
基板は多品種化が進み、サイズ・仕様ごとに条件が変わります。
自動化導入でつまずきやすいのは、「品種が変わるたびに段取りが増え、結局人手が必要になる」こと。メイコーが狙ったのは、現場の運用負荷を上げずに自動化を“使い続けられる”という状態です。吉次氏は次のように語っています。
「作業者の段取り替えの頻度を少なく抑えられているのはとても良い点だと思います」
「基本的に、多品種の場合でも、作業者は台車に基板を載せて装置にセットするだけで自動運転できる仕様となっており、誰でも簡単に作業できるようになっています」

現場で求められるのは、特定の熟練者しか扱えない自動機ではなく、日々の運用の中で自然に回る自動化です。
“誰でも簡単に”を成立させることが、結果として稼働率と省人化効果を支えます。
RSシリーズ採用の理由:6軸の柔軟性と、現場で効く「扱いやすさ」

メイコーの基板工程では、Lラックに限らず平ラックやカゴなど、多様な積載形態が存在します。投入先も工程ごとに異なるため、ロボットには角度・姿勢・アプローチの自由度が求められます。
こうした背景から、同社は6軸ロボットの適性を評価し、川崎重工のRSシリーズを中核に据えました。
谷次氏は、単なるスペックではなく“現場での扱いやすさ”を重視していると語ります。
「様々な形状で積載しておりますので、柔軟な角度や動作が可能な6軸ロボットが向いています」
「RSシリーズは腕周りがシュッとしているので、ケーブルが引っ掛かりにくくて使いやすい」
こうした現場での小さな“引っ掛かりにくさ”や“取り回しの良さ”は、停止要因の低減や保全性、さらには立ち上げ期間の短縮にも寄与します。
自動化を全社・全拠点へ横展開していくうえでも、こうした使い勝手の良さが重要な選定軸となりました。
こうした点も含め、川崎重工のRSシリーズの設計思想や実用性の高さは、メイコーから高く評価されています。

本セルの作業フロー(例):判別→補正→投入→取出しを一連で自動化
本セルが担う代表的な一連動作は次の通りです。
- 作業者が台車(ワーク搭載)を装置へセット
- ロボットがLラック内の対象物を画像センサーで判別(基板/合紙の識別)
- 基板を外周吸着で把持(有効面への接触を抑制)
- カメラで位置ズレを検出し、アライメント補正
- 加工機へ基板を自動投入(ロード)
- 処理後の基板を自動取出し(アンロード)
- 必要に応じて装置内で反転し、表裏いずれの加工にも対応
- 次工程へ搬送/受取までを一連で自動運転
※投入先装置は工程により異なりますが、シャトルステージ型装置など各種装置への展開を想定した“汎用投入セル”として構成可能です。
省人化だけではなく、品質安定とスマート工場化の加速へ
投入・取出し工程は、作業者の熟練や判断に依存しやすい領域です。多品種化が進む現場において、人に依存していた投入・取出し工程は、ミスやばらつき、作業負荷といった課題を抱えやすいですが、本セルは基板と合紙の判別、位置補正、搬送、反転といった複数の要素を一体化することで、これらの課題をまとめて解消します。
その結果、作業の標準化と品質の安定化を実現するとともに、工程全体の稼働率向上にも貢献します。さらに、専用機に依存しない柔軟な構成により、多工程・多装置への展開も容易となり、将来的なライン拡張やスマート化にも対応可能な基盤を構築します。
さらに近年では、最新工場におけるスマート化の観点からも、投入セルの重要性は一層高まっています。
「既存工場での省人化はもちろんですが、天童工場をはじめとした最新工場においても、より一層のスマート化を進めていきたいと考えています」(谷次氏)
今回ご紹介した取り組みに関連して、メイコーの天童工場では、川崎重工の自走式ロボットを活用した基板穴あけ工程の自動化も進められていますので、是非こちらの記事をご覧ください。

メイコーでは今後も、人が担ってきた周辺作業をロボットへと置き換え、工程全体の自動化率を高めていく方針です。
川崎重工の小・中型汎用ロボットRSシリーズを核とした汎用投入セルは、多品種・多工程に広がる基板製造の現場において、次の自動化を前に進める“現実解”として期待されています。
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【会社概要】株式会社メイコー
- 事業内容:プリント基板等の設計、製造販売およびこれらの付随業務の電子関連事業
- 主要製品:両面・多層スルーホール基板、ビルドアップ基板、フレキシブル基板、フレックス・リジッド基板、大電流基板、放熱基板、部品内蔵基板、EMS、メタルマスク、メカトロ機器、映像機器、映像システム
- 本社:神奈川県綾瀬市大上5-14-15
- 設立:1975年11月25日
- 代表:代表取締役社長 名屋 佑一郎
