導入事例:中国国内初!鉱山機械のセンタートラフ製造においてフルオートメーション化を実現

中国・山東省に本拠を置く山東鉱機集団は、長年にわたり鉱山機械や資材搬送設備の製造を手がけ、国内外の鉱山・インフラ産業を支えてきた総合メーカーです。多様な製品を扱いながら、高い品質要求に応えるべく、同社は生産技術の高度化や効率化に積極的に取り組んできました。

近年、厚板溶接を伴う大型部品の製造では、品質の均一化・作業効率の向上・人手作業への依存低減といった課題が顕在化していました。特に溶接工程は、技能者の経験に大きく左右されるため、自動化による安定品質の確保が急務となっていました。

こうした背景のもと、同社は川崎重工の超大型汎用ロボット「MX700N*¹」と溶接ロボット「BA006L」を組み合わせた「センタートラフ自動化生産ライン」を導入。組立・搬送・ルート溶接・内角溶接までを一括で自動化する中国国内初のラインを構築しました。

今回は、この革新的なプロジェクトについて、同社の生産担当者に詳しく話を伺いながら、導入の狙いと成果をご紹介します。

*¹現在はMXP710Lが後継機種となります

中国の鉱山機械産業をリードする企業山東鉱機集団
中国の鉱山機械産業をリードする企業山東鉱機集団

山東省で進む溶接・組立ラインの高度な自動化検討

センタートラフ製造工場
センタートラフ製造工場

自動化の舞台となったのは、山東鉱機集団が保有するセンタートラフ製造工場です。ここでは、鍛造・組立・溶接・反転・内角溶接といった大型構造物の加工が行われており、製品の品質と生産効率を両立させるため、高い技術力が求められています。

―センタートラフとは?

  • 機械・装置・搬送システム等の中央に配置される「溝(トラフ)形状の構造部材」の総称です。
    長手方向に伸びるチャンネル(溝)形状を持ち、周辺部材を支え、配管・配線・搬送物や媒体(粉体・鉱石・スクラップ等)の通り道や受け部として機能します。
溝(トラフ)形状の構造部材
※画像はイメージです

センタートラフは厚板を多用する大型ワークであり、溶接点数も多く、従来は熟練作業者による手作業に依存していました。しかし、人手による溶接は作業負荷が大きく、品質のばらつきや工程ごとのリードタイムなど、製造現場にはさまざまな課題がありました。

【自動化の対象となった一連の作業内容】

  • 部材搬送 :大型ワークを正確な姿勢で治具へ搬入
  • ワーク反転:重量部材を安全に姿勢変更
  • 位置合わせ:組立用治具との精密アライメント
  • ルート溶接:初層の重要溶接を高精度で実施
  • 多層溶接 :厚板ワークの多層・多パス溶接を連続実行
  • 内角溶接 :大型容器構造の内側溶接シームを長尺で処理

これらは精度・速度が求められる工程であると同時に、作業者の負荷が高く、安全面でも改善の余地がありました。

なぜ川崎重工だったのか?

超大型汎用ロボットとアーク溶接ロボットを用いた複数工程の自動化
超大型汎用ロボットとアーク溶接ロボットを用いた複数工程の自動化

前述の通り、鉱山機械業界のセンタートラフ製造で求められる搬送・位置合わせ・ルート溶接・多層溶接・内角溶接すべての工程でオートメーション化する必要がありました。その中で、当社が様々な製品ラインナップを有しており、超大型汎用ロボットとアーク溶接ロボットの組み合わせで一貫してオートメーション化を検討できたことが、川崎重工のロボットに決めた最大の理由と山東鉱機集団の設計担当者は語ります。

同社の生産ラインでは実に23台ものロボットが導入されており、長時間の連続稼働を前提に設計されています。自動位置探索・レーザー誘導・シームトラッキングを組み合わせることで、板厚16〜50mmの中厚板や長尺ビードでも、初層(ルート)から多層まで同じ品質を再現することができています。

山東鉱機集団の生産ラインでは川崎重工のロボットが23台稼働
山東鉱機集団の生産ラインでは川崎重工のロボットが23台稼働

また、作業履歴のデータをもとに最適な設定が自動で選ばれるプロセスデータベースと、製品や部品の種類に応じて条件を自動で切り替えるパラメータ自動変更機能により、少量多品種でも段取り替えの時間を大幅に短縮することができました。

さらに、これは導入後に特に高く評価いただいたポイントですが、川崎重工は単にロボットを納めて終わりではなく、その後のアフターサポートも充実しています。導入→立上げ→連続運用までを見据えた現地サポート体制についても高い評価をいただいたと、設計担当者 冯佳氏は語ります。

山東鉱機集団の設計担当者 冯佳氏
山東鉱機集団の設計担当者 冯佳氏

導入後の作業現場の変化~生産効率は2倍へ——タクト安定と品質再現性の両立~

川崎重工のロボットが実際に稼働する現場
川崎重工のロボットが実際に稼働する現場

導入後、現場はどう変わったのでしょうか。冯佳氏は次のように語ります。

「当社のセンタートラフ製造ラインは、生産効率を従来比で2倍に引き上げました。その背景にあるのは、搬送・反転(MX700N)とルート〜多層溶接(BA006L)の連携によるタクトの安定化です。長時間の連続稼働でもタクトブレが小さく、「1稼働あたり20点」の完成品溶接組立を安定して達成できる運用に移行することができました」

「また品質面では、前述の通り自動位置探索・レーザー誘導・シームトラッキングの組み合わせが効き、板厚16〜50mmの中厚板や長尺ビードでも、初層(ルート)から多層までの仕上がりを再現。その結果、寸法の一貫性や組立精度が維持され、手直し・再作業の低減につながっています」

ロボットによる安定した溶接品質を実現
ロボットによる安定した溶接品質を実現

また、自動化によって従来の現場作業員の作業配分も変わったといいます。重量物の反転・長尺溶接といった人にとって高負荷な作業を全てロボットへ集約したことで、作業者は段取り・検査・付帯作業に割り当てることができました。そうすることで疲労影響や安全リスクの抑制とともに、より働きやすい職場を実現することもできました。

現場作業員がロボットのティーチング作業をする様子
現場作業員がロボットのティーチング作業をする様子

今後の展望:さらなる改善と完全自動化への期待

今回の取り組みは、組立・搬送・反転・ルート~多層・内角溶接までを川崎重工の様々なロボットを活用して一気通貫で自動化した点で、中国国内初の製造ラインとしてセンタートラフ製造における大きな一歩となりました。また、中国国内初の製造現場自動化事例としてイノベイティブコンテストで優秀成果として表彰されています。

中国国内の製造業イノベイティブコンテストで優秀成果として表彰
中国国内の製造業イノベイティブコンテストで優秀成果として表彰

今回のロボット導入は、過去に前例のない製造現場への完全自動化とさらなる効率化への第一歩を果たしました。

川崎重工は、鉱山機械産業の自動化にこれからも貢献すべく、センタートラフ製造工程以外の工程も視野に入れ、未来を切り拓く挑戦を続けていきます。

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